2014年11月25日 (火)

健康の社会的決定要因としての「交通」を日経新聞が取り上げている。

「健康の社会的決定要因 SDH 確かな事実」(ソリッド・ファクツ)のパンフレット
http://www.tmd.ac.jp/med/hlth/whocc/pdf/solidfacts2nd.pdf
に取り上げられた8個の要因の最後に「交通」が掲げられていたのを覚えている人はいるだろうか。

それを今の日本で実証するような記事が 11月23日日経新聞の1面に掲載されている。
同じ日の朝日新聞の無料低額診療の記事に隠れているが、これも注目すべき記事である。

三重県玉城町が、町内に無料の「元気バス」を走らせたら、町の介護予防事業の参加が4倍に増えた。無料のバスが高齢者の外出を促し、健康維持が確実に進んだ。「バスは無料の方が結局は安上がりだ」というのが町の結論である。

僕は、以前から各地の自治体が公営バスの老人無料制度を廃止する動きに対し、その政策が高齢者の健康にどう影響するかを評価した上で行うべきだし、革新政党もその視点で当局を追及すべきだとと思い、それがなされないのを残念に感じていた。

それが全政策を健康の視点で評価すること(健康影響評価 Health Impact Assessment HIA)の始まりになるのだ。

思わぬところで、それがすでに意識的に実行されていることに大いに元気付けられた。

ただ、問題は、地方ではバスそのものがなくなるということなのだが。

*三重県玉城町の様子は
http://www.nakl.t.u-tokyo.ac.jp/odt/dl/ODTC7/5.pdf
で。

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2013年9月 4日 (水)

ニューキノロン全体が糖尿病に、あるいは末梢神経障害に悪影響

「お気に入り」の数が増えすぎて役に立たなくなったので、この前から整理をしている。

アメリカ家庭医療学会のページ

http://www.aafp.org/home.html

を抹消するかどうか考えていたが、ページの端の方に気になる記事を見つけた。

http://www.aafp.org/news-now/health-of-the-public/20130827fluoroquinolonewarning.html

ニューキノロン全体が糖尿病に悪影響というアメリカFDAの2013.8.15の警告である。

一部のニューキノロンが低血糖を起こすことはよく知られているが、それ以外に神経障害を増強するようだ。

「According to the agency, physicians should halt the use of fluoroquinolones and switch to another class of antibacterial drug if a patient develops peripheral neuropathy symptoms unless the benefit of continued fluoroquinolone use outweighs the risk..

FDAによると、引き続きのニューキノロン使用の利点がリスクより優らない限りは、患者が末梢神経障害の徴候を呈しているなら、医師はニューキノロンの使用を止めて別の抗菌薬に切り替えるべきだ。」

とある。

このページをお気に入りから消すののも止めることにした。

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2013年9月 3日 (火)

在宅医療を統制しようという動き

朝日新聞1面がどこかおかしい。

8月25日
「患者、金づるか」 紹介ビジネス、過剰診療の恐れ
http://www.asahi.com/national/update/0825/TKY201308250031.html

8月26日
「はり治療、覚えないのに年160日 鍼灸院が架空請求か」
http://www.asahi.com/national/update/0826/TKY201308250281.html

9月2日
架空診療所、張り紙だけ 診察日なのに歯科医は不在
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130902-00000010-asahi-soci

こんな記事を連日1面に載せる必要があるのか。すべてが在宅がらみで、在宅医療は不正の温床という偏見を作り出そうとしているように見える。

何を目的に世論操作しようとしているのか、よく見極めておく必要がありそうだ。

*これをFacebookにも書いたら、栃木の関口先生が次のようなコメントを付けてくれた。これも参考になる。

ほぼ時期を一にして、「在宅医療における患者紹介等の報告様式について」【H25.8.28厚労省保険局医療課事務連絡】が出ています。朝日の記事と無関係ではないと思います。

http://www.khosp.or.jp/news/contents.php?ID=550

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2012年6月14日 (木)

自衛隊は軍だと防衛相がいっていいのか

今朝の朝日新聞を読んで驚いた。

防衛相 森本敏は、イタリアの国防相(海軍大将でもある)と会談して「ともに軍に奉職したものが国防大臣になったという共通点に共感を覚える」と発言している。

森本が航空自衛官だったことは知られているが、航空自衛隊は政府見解でも絶対に軍ではないだろう。

自衛隊が紛れもなく軍隊だ、と僕たちが主張するのはその憲法違反を指摘するためだが、政府は一度だって自衛隊が憲法違反の軍隊だと認めたことはない。

ここに至って、森本は堂々と、自衛隊を軍だと言い始めたわけである。

こういうものを防衛相にしておくわけには行かない。


*自衛隊が外交上、他国の軍と照応するものとして取り扱われているのは、すでに既成事実だが、それを利用して、自衛隊=軍と認識を拡大させようとしているのは、石原も森本も同等で、それは仕方がないと看過するのは我々の鈍感としか言えない。

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2008年11月20日 (木)

医師バッシングの再開に当たって、私たちが心得ておくべきことは何か

麻生内閣から医師攻撃の発言が続いている。

1:11月10日二階俊博経済産業相は、舛添要一厚生労働相と会談した際、救急医療機関で妊婦の受け入れができない事例が相次いでいることに関し「政治の立場で申し上げるなら、何よりも医者のモラルの問題だと思います。忙しいだの、人が足りないだの言うのは言い訳に過ぎない」と発言した。

2:11月19日麻生首相は、全国知事会議で「自分で病院を経営しているから言うわけではないが、地方病院での医者の確保は大変だ。社会的常識がかなり欠落している人が多い。ものすごく価値観が違う。波長の合わない人間もいる」と発言した。

いずれも、その後陳謝しているが、組織的行動の可能性が高い。

医療崩壊のなかで、人員不足に耐えてがんばっている医師を擁護する世論が次第に強くなっているのを切り崩そうという動きである。

当面、医学部入学者定数は増やして見せたものの、医師総数を抑制するという2回の閣議決定を変更していないし、毎年連続の社会保障費2200億円削減も中止されていない。医師主導の医療崩壊のキャンペーンも実はさほど効果を奏していないと見るべきである。

そして、憂慮すべきこととして、医師のかなりの部分に患者敵視発言のネット上の垂れ流しがある。

医師バッシングはこれを好機と見て必然的に再開されたと考えるのが普通である。

一部の医療崩壊論者が言うような「患者のモンスター化→病院勤務医の疲弊→医療崩壊」というような図式はあまりに皮相である。

少なくとも「医師不足・医療費抑制政策→医療レベルの低下・医療事故の多発→医療不信の増大→医師・患者関係の悪化と一部患者のモンスター化→病院勤務医の疲弊→医療レベルの低下・医療事故の多発→医療不信の増大・・・悪循環」という程度の認識は持って発言してほしいものである。

この情勢の中で大切なのは、圧倒的多数の国民を味方につけること、国民の間にある医療不信をまっすぐ受け止めてその原因に関する理解を共有することの二つである。

* 大筋を変えるわけではないが、麻生首相発言は別の読み方があるのに気付いた。すなわち、従来の日医の姿勢への非難としての読み方である。

麻生飯塚病院の巨大化に伴って、地元医師会との軋轢があったと仮定すると分りやすい。医師会は新規開業規制をするのと同じ論理で、病院の規模拡大に反対することが多い。病院側として、許認可権を持つ県の担当者も地元の医師会の同意を求めてくるため、医師会の意向は無視できない。地域医療に貢献したいという病院の志を同業者エゴがつぶしに来るという感じも生まれなくはない。医師会としては営利的な大病院の活動を住民側の立場で規制するという大義名分を掲げることも可能なのだが。

かつ、医師会は医師数増加にも反対してきたという歴史がある。医師数を増やすこと、病院を強化することに反対してきた非常識な「あんた方」の「あんた方」は医師会幹部のことなのである。

しかし、上に述べた医師会の姿勢も既に過去のものである。読み方を変えても妄言だったことに変わりはない。

**素直に読めば、麻生発言は、「経営者として雇っている側から見て、勤務医に非常識な人が多いので病院経営が大変だ」と聞こえる。

ところで、ほかでもない今、医師会を攻撃するということについては重大な意味がある。地方に住む従来の自民党支持勢力に与えていた既得権を容赦なく切り捨て、輸出型大企業の利益拡大を図ることが小泉構造改革の最大の特徴だったわけだが、それは、2007年参議院選挙で「地方の反乱」として強い反撃を受けた。その結果として、小泉構造改革の急進的部分の手直しのため福田、麻生は起用されたわけである。しかし、米国発の金融危機がはっきりしてきた今、輸出型大企業の権益保護が再び急務となってきて、旧来の自民支持勢力との関係修復はもはやできなくなったということである。

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