遅咲きの花
「せっかく治した患者を、その病気の原因になった家にそのまま帰すなんてどうかしているよ」というSDHの原点となったセリフを説明したくてマイケル・マーモット『健康格差』(日本評論社2015年)の序章を読み直したが、つくづく訳が拙すぎる。
マーモットさんの文章の面白さをことごとく消している。
その例はいくらでも挙げられる。
たとえば、どの民族も健康に一番悪い飲み物を飲みながら「君の健康に!」と言って乾杯する、英国人も「Here's looking at you, kid.」(映画訳なら「君の瞳に乾杯」)なんて洒落たことを言わないときは「Good Health」だ、という話。
これが映画『カサブランカ』のセリフだと全く考えていない訳し方になっている。
有名な公衆衛生学者ロバート・カラセックが、マーモットの1970年の論文を適当にアレンジして卵のパックのなかに入れられていた宣伝パンフを読んで、職業性ストレス学説を思いつく場面も、原文は「エウレカ!」(ーアルキメデス)と書いてあるのに、平凡に「大発見だ」と訳している。
10年目の後悔、先に立たずだが、10年前はあまりにものを知らなった。
つくづく自分が遅咲きの花だと思う、しかも大輪の。
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