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2025年5月26日 (月)

ローカル政治新聞への寄稿

5月23日の朝は藤津章智さんの死亡を知ることから始まった。新卒で就職した医療生協を退職して日置町の町会議員に当選、晩年の長期療養期間の一部では僕が主治医となった。『山口民報』を病床で編集していた姿を思い出しても寂しい。

 午後は、診療を休んで医療生協の山口市事務所に行き、山口県からの出前講座「第8次山口県保健医療計画」の説明を聞いた。思ったのは、「保健医療計画」も大目的は県民の幸福のためにあるだから国の方針の具体化に終始してはならないということだった。面積にして県の6割に及ぶ僻地も、県人口の8割以上が住む瀬戸内側の工場地帯も区別なく進行する貧困と格差こそが県民の幸福と健康を破壊する最大の元凶なのだから、それに対決しない「計画」はありない。

 ならば、困難を抱える人の集中する医療機関にこそ、単なる寿量権を超えて、積極的に貧困・格差に専門的に関わる部署を設置するのがいい。実は医療生協の地域福祉室「メロス」はそのために開設したのだった。それにならって多くの病院が福祉部門を備えれば状況は大きく変わるはずである。各病院が雇用するソーシャルワーカーの人件費を助成するくらいの大胆な気概が県には望ましい。

 そのさい、病院群全体への県の支援デザインが重要である。今はやはり基幹大病院への支援が突出している。地域枠で採用する医学生の卒後の勤務先も僻地診療所を除けば、それら公的大病院に限られている。公的病院の中には病院家庭医療や慢性期医療を特徴にし始めた中小病院もあるが、例外に過ぎない。県内の基幹大病院への医師集積を強めれば大都市部の大病院との競争にも勝って山口県を去る若手医師を県内に引き止められるという意図だろうが、それは成功して来なかったし今後も可能性は低い。

 どうしたら山口県の医療に魅力を感じる若手医師を増やせるかというと、公的・民間の別を問わない、ヒューマンで個性に富んだ中小病院の強化以外にない。多数の中小病院が公共性を強め、公的大病院と同等の支援を受ければ、救急医療も潤滑さが復活する。救急車利用を有料制にしたいと思うまでに至っている大病院救急医の疲弊も消える。県の決意次第だ。

 実は中小病院の支援は産業戦略として普遍的なものである。いろんな市町で比較的最近制定された「中小企業振興基本条例」は自立した地域経済づくりの大黒柱であるが、中小病院支援こそその主要な一環であり、その実現の鍵でもある。 

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