2025.5.28 県連理事会挨拶
1日の寒暖差が大きい日が続いて、体調を崩しがちな5月になりましたが、7月20日あたりに予想される参議院選挙を控えて、米問題ほかの政策関連の動きが慌ただしくなってきました。この機会に私達も政治に何を望み、どう行動するか改めて考える機会にしたいと思います。いってみれば山口民医連としての「政策活動」に取り組もうという話かと思います。
それに関連しますが、5月23日に医療生協の山口市事務所主催で山口県からの出前講座「第8次山口県保健医療計画」の説明会を開きました。
「5疾病と6事業および在宅医療」に重点を置いた施策が並べられており、事業については新型コロナの経験を踏まえて「新興感染症医療」が新たな重点事業に加えられています。
それらを実際に担う医療従事者として、一見無味乾燥な各項目を具体的に検討
する責任が自分たちにあるなと思って聞きました。
例えば新型コロナで療養病棟や高齢者施設がほとんど荒野に放り出されたような孤立無援の状況になったことが計画にどう反映しているかと思って読むと、それはまったくないのです。
そのほかの従来課題においても、健康の社会的決定要因SDHの視点はほとんど見られません。
そもそも医療政策を論じるとき、ぜひ思い出してほしいのは、マイケル・マーモット『健康格差 不平等な世界への挑戦』(日本評論社)の冒頭です。資料として添付しましたが、
「せっかく治療した患者を、なぜ病気の原因となった環境に戻してしまうのか」
という言葉からそれは始まります。
その場しのぎの、当面を糊塗するだけの医療になってはいけない、病気の社会的要因には医療の現場からこそ手を伸ばせとマーモットさんが言っていると私は読みます
困難を抱える人が集中する医療機関にこそ貧困・格差に専門的に関わる部署を設置しなくてならないのです。実は医療生協健文会の地域福祉室「メロス」はそのために開設したのですが、これはすべての病院に適用されなければならないことではないでしょうか。各病院がそのために雇用するソーシャルワーカーの人件費を助成するくらいの大胆な気概が県には望ましいと思います。
それから、医療機関や医師のの配置についてもグランドデザインが必要だと思います。
基幹大病院の医師集積を強めれば大都市部の大病院との競争にも勝って山口県を去る若手医師を県内に引き止められるというのは、失敗することが試され済みの愚策です。
どうしたら山口県の医療に魅力を感じる若手医師を増やせるかというと、公的・民間の別を問わない、ヒューマンで個性に富んだ中小病院の強化以外にありません。美祢市立病院が一定の家庭医を備えて「コミュニティ・ホスピタル」を目指すとしていますが、これを例外にすることなく、いろんな中小病院が公共性を高めて活躍できるような政策を立てれば、救急医療も潤滑さが復活します。先日の「山口県医師会 勤務医部会報」の座談会では、大病院で救急医療にあたっている医師が疲弊のあまり、救急車利用を有料制にしたい、有料かどうかは自分たちに判断を任せてほしいとまで言っていますが、そうした意識の後退もなくなります。
実は中小病院の活性化は県の産業戦略としても大きな幹になるはずのものです。いろんな市町で比較的最近制定「中小企業振興基本条例」というものが制定され、自立した地域経済づくりの大方針になっていますが、それを実現する手がかりがここにあるといってよいと思います。
南海トラフ地震での山口県の被害は、私たちがいま漠然と思っているものより、遥かに激甚なものになると実は予想されています。これは来月の宇部学で正面か学ぶ予定ですが、そのときも中小病院が復興の柱となるはずです。
災害からの復興策としてBCP(災害時の事業継続計画)がありますが、単一の病院だけで策定しても無意味で、面として、つまり中小病院同士、中小病院と大病院、中小病院と開業医群との連携として構想しなければならないと思います。
以上、今年の最も重要な政治的局面を直前にしての挨拶といたします。熱心なご論議をよろしくお願いします。
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