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2024年6月26日 (水)

2024.6.26 県連理事会挨拶

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  蒸し暑い夕方の会議参加ご苦労さまです。
5月の県連総会後初の理事会です。
最近の情勢に簡単に触れて挨拶に代えたいと思います。

言いたいことはたくさんありますが、中でも6月19日に地方自治法の改定が成立してしまったことはきわめて重大でした。
非常時には国が自治体に指示できるという内容です。コロナ禍で自ら作り出した混乱を口実に、国が公然と自治体に命令できるようにした、まさに「ショック・ドクトリン」の見本のようなものです。
憲法の柱として地方自治があります。それは第2次大戦において、自治体が戦争遂行の道具になってしまったことへの反省によるものです。国と県と市町村とは対等であり、命令する、されるという関係にはないというのが団体自治といいます。そして自治体運営は住民参加で行う原則を住民自治といい、団体自治と住民自治とで地方自治は構成されています。この2つからなる地方自治があるからこそ、私達は自分の足元から「地域循環経済」「ミュニシパリズム」という変革の波を日本全体に広げるという展望を持つことができるのです。
しかし、今回の改定はその前提を掘り崩すものでした。ほとんど改憲したに等しいと言われます。自治体を守るべき国が、自治体を支配するものに変わった訳ですから。
結局何を狙っているかというと、中国どの戦争の準備です。それ以外にはない。

僕たちが安穏としている間に戦争の準備が国民の首を絞め上げているのに気づかないといけないと思います。
県連総会では海上自衛隊呉基地の増強についてお話しました。戦闘機も搭載できる事実上の空母「かが」という最大の護衛艦が配備され、太平洋・インド洋に活動範囲を広げています。その経過中に起こったのが4月21日の南鳥島付近でのヘリコプター同士の衝突、8人の自衛官死亡事件でした。
いま進行しているのは、佐賀空港に陸上自衛隊オスプレイ17機を配備するための工事です。この17機というのは、日本がアメリカから輸入したオスプレイの全部で総額3600億円でした。世界でもオスプレイを買ったのは日本だけで、アメリカ本国でも今年生産ラインが止まるという欠陥兵器です。しかし、安全性よりも戦闘能力の高さから日本に押し付けられたのです。
オスプレイは佐賀空港の滑走路を使用しますが、工事が終わると、すぐ近くにある長崎県佐世保市の陸上自衛隊水陸機動団(日本版の海兵隊=殴り込み部隊)と綿密に連携して、南西諸島での中国との戦闘に備えるとされています。
呉―岩国―佐賀-佐世保と連なる線上に私達が暮らしていることを鋭く意識すべきだと思います。

話を医療活動に転じたいと思います。
今後の医療介護活動の最大の課題は、家庭医療学を全県連的に学ぶところにあると僕は思っているのですが、それに関連したことを少しだけお話します。

日本に家庭医療を導入する上で大きな役割を果たした藤沼康樹先生が、雑誌「総合診療」に連載した「55歳からの家庭医療」をまとめて一冊の本として医学書院から出版しましたが、その中にこんな話がありました。

ある糖尿病患者が、食事療法がなかなか実行できず、繰り返し栄養指導しても行動が変わらなかった。しかしあるときから体重が減り、血糖コントロールが改善してきた。やっと外来での指導か実り始めたかと考えたが、変化の原因は医療現場以外のところにあった。トレーディング・カードゲームをしていて、日曜日の会場でよく対戦していた中学生が1型糖尿病であると知った。ゲームの間に少し話していると、少年が自己インスリン注射や食事療法の大変さを屈託なく話した。
それを聞いているうちに「何かに打たれたような感覚」が生じて、それから食事や運動に取り組むようになった。

藤沼先生はこの「何かに打たれる」ことをエピファニー、顕現と呼んでいます。本来の意味はキリストが現れることを言いますが、私は「初心」と呼びたいと思います。
よく、誰でも初心があるだろう、それを忘れるな、思い出せと言いますが、僕はそれは違うと考えます。
初心、つまり行動変容のきっかけを獲得している人は稀です。
誰にでもあるのはイニシエーション、つまり入職の儀式だけです。民医連の事業所に就職したら、入職式とオリエンテーションをくぐって民医連人になると思うのは幻想でしかありません。
本当の初心を獲得することが、今何より大事です。

藤沼先生は診察室の外の地域に、患者を変える、つまりエピファニーを起こす力があると主張していますが、僕は民医連の職場に民医連の初心を与えてくれる力があると信じています。
誰かが屈託なく患者支援の苦労や患者さんの感謝の言葉を語ってくれる時、それから目を背けている自分が見え、「何かに打たれる」、そこに初心が生まれてくるのだと思います。
僕らがいつまで経っても小集団であり、あまつさえ消滅の危機に立っているとすれば、初心を生むことにあまりに無力だったということを意味するのだと思います。
今こそ、私たちの行動変容が必要な時です。初心を見つけましょう。
その呼びかけを今回のあいさつにしたいと思いますかが、最後に、家庭医療を学ぶ2冊の日本語の本を紹介して終わりにします。
今日は部会ですが、熱心な議論をよろしくお願いします。

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