文庫本の表紙
①「夏は『三四郎』を読んだ」と、同じ山県郡出身で中学受験模擬試験の頃から知り合いの山本義弘くんが屋上で言うので「柔道の?」と僕はつい尋ねた。
「まさか、夏目漱石」
焦った。「それはどうしたら読める?」
「普通に本屋で文庫本があるよ」
それが中学1年の広島市での書店デビューだった。それまで自宅や親戚の家で文庫本を見たことがなかったわけではないが、自分で買いに行けるものとは思っていなかったのだ。
それからしばらくして、僅かな小遣いで10冊くらい集めたのを下宿の部屋に並べて表紙の絵を楽しんでいた時期があった。
今日、帯を外して文庫本のフォークナー『野生の棕櫚』の表紙を初めて意識して見た。想像が少し難しい描写を補ってくれるもので、それなりに美しい。
急に60年前の、自分で買った本の世界の入り口にいた気分が蘇ってきた。
あの成績の良かった山本くんは生きているのかなぁ。検索してもヒットしないが。
②フォークナー『野生の棕櫚』を仕事の合間に読んでいると、ふと、題名をおぼろげに記憶していた『人生のレールを外れる衝動のみつけかた 』(ちくまプリマー新書) を衝動買いしたのだった。 と、いっても1000円もしないものだったが。
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