« この空が飛べたら | トップページ | 走るよ »

2024年1月30日 (火)

「社会福祉」と「社会保障」という用語がどのようにして生まれたか

歴史的な経過を確認しようとしていたら、東方淑雄さんという名古屋学院大学の研究者(後に大妻女子大)の論文に「社会福祉」と「社会保障」という用語がどのようにして生まれたかというヒントになる文章があった。
以下の引用は、だいぶ改変しても読みにくいものであるが、
①ケインズ主義での国家の市場介入による雇用拡大・貧困解消・消費拡大政策が「社会福祉」、
②ルーズベルト政権がすでに実施していた生活保護,失業手当,老齢年金が「社会保障」だというのである。
そして
③これを憲法25条で「生存権」と呼んだのは、鈴木義男ら福田徳三に学んだドイツ社会政策学派(ワイマール憲法と密接に関連)に影響された学者たちだった
という複雑な話。
これをまるで初めて読んだつもりでいると、検索にまた僕の古いブログが引っかかる。2012年9月11日のものである。
どうやら、何も進歩がなく、同じところぐるぐる回っている自分の姿が見えた気がする。
ところでブログに書かせてもらった鈴木頌先生はお元気だろうか。もう80歳くらいになられているか。
「ニューディール時代にはじめてアメリカンケインジアンによって造語されたSocial Welfare Function=「社会福祉」と,同じ時期(1935年)にローズベルト政権が世界ではじめて成立させていた生活保護,失業手当,老齢年金の3社会的施策を柱とする“Social Security Act”=「社会保障」が,生存権を保障する政策の名称として規定づけられている。
これが生存権保障という用語を当てられたのでねじれ現象を起こすことになっていたのであった。おそらく森戸辰男氏等の日本側の憲法改正委員たちは草案の社会福祉,社会保障という用語は同じに社会が冠せられているので,第2次世界大戦前から使われていた社会政策や社会事業と同類の貧困救済の機能をもつ概念と考えられて草案のなかの概念からえらんで記入したのであろう。
貧困・失業・高齢を救助する社会保障の方はともかく,社会福祉はまったく異質な領域の用語だったのであるから,もともと日本国憲法第25条はドイツ的社会政策理論とアメリカ的ケインズ理論およびニューディールの理念という3種の異質な理論が混合されて成立した論理的矛盾をもった条項だったのである。」

|

« この空が飛べたら | トップページ | 走るよ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« この空が飛べたら | トップページ | 走るよ »