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2023年10月26日 (木)

ローカル政治新聞への寄稿

少し前の雑誌「世界」に向井和美『読書会という幸福』という連載があった。これを詳しく読んだのは、人口激減地方の民医連の後継者対策として、たとえば高校生相手に自分にできることがあるとすれば読書会くらいではないかと思い、その方法を学ぼうとしたわけである。
読んでいるうちに手っ取り早く実際に読書会を始めてみたくなった。医学生2人と病院職員数人で齋藤幸平『人新世の「資本論」』を読んでみることにしたが散々な失敗だった。社会科学系の読書会は僕の周辺では難しいという教訓を得た。やはり小説からしか始まらない気がした。
そこで小説といえば、最近驚くべき作品に出会った。僕にとってはガッサン・カナファーニー『ハイファに戻って』、野上弥生子『迷路』、李恢成『見果てぬ夢』以来のもの。
それはハン・ガン(韓江)という1970年生まれの韓国の作家による『少年が来る』である。
6月のある日、少し早く目が覚めて放送大学を見ていたら 「世界文学への招待」という番組で翻訳家 斉藤真理子さんがこの作品を講義していた。それがとても感動的だった。すぐに検索したが、ハン・ガンは世界で最も注目されている作家で、1980年の光州事件を描いたこの評価の高い作品も2016年には日本語に翻訳・出版されていた。隣国の文学への無知を恥じた。
光州市出身とはいえ、当時は10歳で国外にいた彼女が今になって事件と正面から向き合ったのは、数千人という虐殺犠牲者の記憶のためという理由も当然あるが、それだけではない。韓国の友人から紹介された現地のインタビュー記事では、おそらく深刻なPTSDによるだろうが、自殺率が11%に達している事件生存者に対し「それでも死なないで」と訴えたかったということである。
そして読書会の話に戻るが、この小説こそぜひ読書会を開いて病院職員と共有したくなった。全7章を1年近くかかっても朗読し合うのは貴重な体験になるのは間違いなかった。
呼びかけると、意外な喜びというか、60歳代から20歳代まで5人の職員参加者があり、すでに3章までを終えた。
ゆっくり読んでいくと誰かが顔を覗きに来る気がする。それが事件で殺された『少年が来る』ということなのだった。

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