今年の6月は世界的に史上最高の暑さだったようです。世界の暑さは「未知の領域」に入ったと科学者が警告しているという記事を読みました。
2023年6月は、北アメリカ・地中海沿岸・東南アジアが熱波に襲われ、これに続き7月も世界各地で猛暑が続き、これまでもっとも暑い年だった2016年と2020年を超えて観測史上最も暑い年になるという予測です。
水害もますます過酷となっており、このままでいくと、お互い相当の確率で災害死する覚悟を固めないといけないということになりますが、それでも私達は抵抗していく以外にありません。職員高齢化のなかで民医連の存続をどうするかというより、世界全体が崩壊しないために民医連は何ができるかという問題を立てないと行けないのだと思います。そのさきに民医連の存続や発展が見えてくるのだと思います。
その問題の有力な答えの一つに地域主権主義=ミュニシパリズムがあります。市立病院をミュニシパル・ホスピタルというようにミュニシパリズムは「地方自治体主義」という日本語になりますが、もともとの言葉で呼ぶのは、一つはいまある地方自治体を変革してボトムアップ型=直接民主主義型=市民直接参加型の自治体に変えていくという意味合いによります。
もう一つはそう変身した自治体を拠点に、全地球的観点で現代の資本主義=新自由主義にあらがっていくというという展望も持っているからです。
ミュニシパリズムが有力な答えの一つだというのはそういう構造を持っている事によります。
7月22日に開かれた「自治体学校 in 岡山」の岸本聡子杉並区長の講演要旨(資料1)からミュニシパリズムをもう少し深めてみると、3つの側面があることがわかります。
一つは、生活者あるいは労働者としての要求運動です。非正規労働者の待遇改善からはじまって国への気候危機対策要求に至るまでの幅広い運動が、ミュニシパリズムの名のもとに行われています。被害を被る当事者の運動であることが特徴的です。
二番目は 地方政治の権力を握ることです。中でも女性の政治参加を進めて、女性首長、女性議員を増やして、政治の中心に人を大事にする姿勢を打ち立てる、つまり政治を「ケア」化すること、さらに少数者の人権擁護、電力・水・食糧・景観など住民の「コモンズ」を拡大するという方向性です。
意外かもしれませんが、これを政治の「フェミナイゼーション」と呼びます。文字通りいえば「女性化」ということになりますが、意味するところは「競争ではなく共有を、妥協ではなく共同を、かけひきではなく協力を、支配や恫喝を排して、少数者の声や慎重意見をすくいあげる、そのためのやり方や文化そのものを変えていこうという提案」だとされています。これらのこと自体が、政治の表舞台を占領する男性によって支配され、家族のケアに閉じ込められ続けてきた女性が育んできた生活・行動様式だからです。その様式をこれからの世界のあり方にしようという立場からは、フェミニズム」はマルクス主義と並ぶ二つの解放思想と言われたりもします。
それを目指す政党を既存の大政党でなく、地域に根ざした小さな政党として構想するところに具体性と新しさがあります。
三番目は地域経済の民主化です。政治権力を握るということに密接に関連していますが、内橋克人さんの提唱したFEC(食糧・エネルギー・ケア)自給圏構想に代表されるように、脱炭素化産業で成り立つ豊かな地域経済を創造することです。住居の確保とすべての住宅の高レベル断熱化などは新しい課題だと思います。
そういう3つの主側面を持つミュニシパリズムですが、これは結局、時代の大きな変化としてのフェミニズムが、これまでの民主主義・社会主義運動と合流したものだろうと考えます。
民医連も同じです。1990年から2020年の間に成し遂げた日本国憲法との合流に引き継いで、次はフェミニズムとの合流、反気候危機運動との合流が、民医連を大きく揺るがし、世界の崩壊に抵抗する運動の柱に成長させているのだと思います。
そのときのキーワードがまさに「ケアの倫理」なのではないでしょうか。
全日本民医連は医師の絶対数を増やすという運動に本気で足を踏みだすとしていますが、これもフェミニズムの前進、日常の労働のケアの倫理への飛躍なしには可能にならないと思います。今ある職種構造、職種関係はそのままにして、それに無批判でいて医師数だけ増やすというのは誤りだろうと思います。
しかし、見方を変えれば言えば、「ケアの倫理」は人の弱さ、脆弱性を直視し、支え合いの中にささやかな希望を見出すものです。連日、北海道の事件が報道され、わからないことが多いなかで気分の失調を起こす人も多いと思います。僕もその一人ですが、人間は誰でも大きな闇を抱えてしまう、それをケアする人も脆弱な立場に追い込まれていく、その連鎖をどう断ち切るかということも改めて考えてみたいと思います
それをケアする人も脆弱な立場に追い込まれていくという連鎖を改めて考えてみたいと思います。
大軍拡の進む中で、もうすぐみんなで戦争経験を考える8月を迎えるときに、今日はやや大局的すぎる話になりましたが、8月の運動課題含めて、今月も熱心な議論をよろしくお願いします。
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