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2023年3月22日 (水)

2023.3.22  山口民医連理事会挨拶

今年度最後の理事会になりましたが、異様な暖かさで桜も史上最も早い開花となりました。今年の水害、台風がどうなるのか心配です。気温上昇対策に失敗している今、災害の激しさは年々増して行くと覚悟しておかなければなりません。

もちろん、南海トラフ大地震の切迫、原発再稼働・延長・新設による危険、台湾をめぐる軍事的緊張は気候災害と同時、相乗的に私たち国民の被害を拡大しますので常に注意を払っておかなければならないものです。今日は広島湾で初めて行われた米軍自衛隊合同演習の模様など身近になってきた軍事的緊張について、岩国の吉岡さんからお話しいただきます。

新型コロナ対策は特に山口など高齢化率の高い人口減少地方で猛威を奮った7波、8波の経験を踏まえて、5月8日以降の感染症法取り扱い変更後の政策要求をまとめることが急務になっています。病院は2回の留め置きクラスターを経験し、クラスター以後も数えると10人前後の死亡者を出しました。在宅介護の経験はもっと悲惨で「地域に留め置かれた」人はまさに放置されました。この経験を振り返り、自治体や業界団体と、広く認識を共有することが、5月以降の対策に直結します。雑誌や新聞などの資料も添付していますが、後で議題としていますので、熱心な討議をお願いします。

民医連の理念問題では、第二回評議員会で取り上げられた「ケアの倫理」について深めようといく動きが注目されます。

「ケアの倫理」は「正義の倫理」にならぶ私達の行動規範です。
正義の倫理は「公正」とも言いかえることができ、介護労働者の低賃金と劣悪待遇は直ちに一般労働者並みに是正されるべきだという主張は正義の倫理に基づくものです。また誰しもSDHの重圧から脱して健康に生きることが可能にならなければならないというのも典型的な正義の倫理です。

いっぽう「ケアの倫理」は互いに依存する以外にない人間関係の規範で、一言で言えば「人は能力に応じてケアを提供する責任があり、必要に応じてケアを受ける権利がある」ことの実現を目標とします。特にケアを提供するものも、受け取るものも社会的に脆弱になるという認識が必要で、社会は両者に必要十分な配慮をしなければなりません。

ケアの倫理が女性差別の中で女性により育まれたことから見て、ケアの倫理の確立と女性差別の解消が密接に関連していることは明らかです。特に男性がケアの倫理を規範として行動することがケアの倫理の確立に通じます。

また古い正義の倫理でケアの倫理を攻撃しないことも重要です。
固定された職種の業務範囲にケアの提供を縛ろうとするために様々な軋轢や配慮不足が生まれようとしています。
アウトリーチしてホームレスの足浴に行くことが職種の則を超えていると批判された例などが報告されています。

ケアの倫理は私達にとってまだ新しい認識ですが、そのインパクトはSDH認識が果たしたもの以上があるように思えますので、注目をお願いしたいと思います。

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