第29回山口民医連「元気の出る看護介護症例検討会」あいさつ
第29回山口民医連「元気の出る看護介護症例検討会」にご参加の皆さん、土曜日の午後にもかかわらず熱心にご参加いただきご苦労さまです。県連会長としてのご挨拶を申し上げます。
今日は何を話そうか、大変迷いましたが、その説明のために映画を2つ取り上げたいと思います。一つは門脇麦と水原希子が主演した「あのこは貴族」2021年です。
東京はお互いに出会うことがない上下の階層にくっきり分かれているという認識のもとに、結婚することに自己実現をかけている上層の門脇麦と、地方出身で学費の仕送りが途絶えて大学を中退しながら、挫折の末に起業して生きていこうとする下層の水原希子が、ある偶然で交錯するという話です。門脇麦のほうが水原希子に影響されてその階層から離れていこうとするのがエンディングです。その影響は「結局どの身分に生まれようとも、最高の日もあれば最低な日もある。大事なのは嬉しいことも悲しいことも素直に話せる相手がいることじゃない?」という水原希子の語りです。
少し僕が話すには似合わない感じがありますが。
もう一つは「ちひろさん」という映画です。有村架純が主演で、Netflixで今年の2月23日から公開というものですから、見た人は少ないかもしれません。しかし、大きな話題にはなっています。
あらすじは話さないほうがいいと思いますが、他者にこころおきなく依存できることの大切さと、そのことの中に埋没してしまうのでなく、いったん他者から離れて自立して、そこからもう一度人間のつながりの意味を見つめ直す必要性に着目した話だとは言えるのではないかと思います。
この2つの映画に共通するものを表現する言葉を探すと「シスターフッド」かもしれません。立場の違った女性同士の助け合いという意味です。
自分でもわかりにくいと思う以上の話から何を言いたかったかというと、実はこれからの民医連にとって何が大切かという話です。
人々が貧困や差別で生命や健康を失うことをなくすため「公正、平等な社会を作りたい」と思ってこれまで何十年とやってきたのですが、その目標への近づき方において、なにか大事なアプローチ法を忘れていた、それが言い過ぎなら、ある大事なことをあまり重視しないで来たという発見を話してみたかったということになります。
つまり、目の前にいる人、患者、利用者、同僚、家族全部含まれますが、その人達の苦しみ、悲しみを、「物語」として深いところで理解して惜しみなく支援する、そのためには「経常利益」や職種の守備範囲とみなされているものに制限されない、求められる依存関係に思い切って応えるという気概のアプローチがないと実は前に進めなくなっているのではないかという気づきです。
いま焦点の難しい言葉でいうと「ケアの倫理」を十分に発展させてこなかったところに、僕たちが情勢を切り開けない壁があるのではないかと思います。
そういう意味ではこの「元気の出る看護介護症例検討会」こそ、そのことへのヒントがいっぱい詰まった企画だったのだと思い直しています。ということで、今日は心して皆さんの発表演題を傾聴したいということをお話して私の挨拶とします。
よろしくお願いします。
| 固定リンク
コメント