異論にどう対処するのか
今回くらい異論続出なら、その人たちを去らせないために、「異論があれば出ていけばいい」式の宣伝より、徹底的な対話を組織すべきだろう。異論を出す権利というより異論に向き合う義務ではないか。
今回くらい異論続出なら、その人たちを去らせないために、「異論があれば出ていけばいい」式の宣伝より、徹底的な対話を組織すべきだろう。異論を出す権利というより異論に向き合う義務ではないか。
この問題を知ろうとするときの最初の案内書とでも言うべき内容。
三文書により、日米安保が「日本防衛計画」から「中国を想定敵国にした包囲網」「臨戦安保」に変わり、東アジア版NATOに発展する布石が打たれたとする。
一口に安保三文書といっても構造がある。
第一文書「国家安全保障戦略」は三文書の総論になる。
2013の旧戦略が北朝鮮の名を第一に挙げていたのから、今回は中国、北朝鮮、ロシアの順位をつけ、強い調子で中国を事実上の「公敵」とした。想定敵国を定める事態は1907「帝国国防方針」以来のことで、約120年ぶりの再来と言って良い。つまり中国の台湾侵攻を想定し、その際の米軍参戦、自衛隊参戦を決意した文書になっている。
第二文書「国家防衛戦略」は、第一の具体化で、従来「防衛計画の大綱」とされていたものの改名。改名は2022.4に自民党が提案した米国の「国家防衛戦略」と名称を揃えるという話が実現したもので米軍との一体化方針でもある。ここで敵基地攻撃能力が専守防衛を騙りながら明示される。
第三文書「防衛力整備計画」は従来は5年期限の「中期防衛力整備計画」を10年期限にして改名したもので第二文書を更に具体化した買い物リスト、to doリストである。
自衛隊全部隊の指揮官を置く、沖縄駐屯第15旅団を師団に格上げする、司令部を地下化し攻撃に備えるなどが述べられている。旅団が師団になれば、司令官は陸将補から陸将に、定員は2100から最低4000に、米軍との基地共用→統合ということが予想される。
2.18-19の全日本民医連評議員会の報告をかねてご挨拶します。
2.18土曜日に 評議員会にリモートで参加しようとしたまさにその時、病棟に直径60mmを超える腹部大動脈破裂の方が入院2日目でまだ診断されずにいることがわかり、その時対応する医師が自分しかなく、大学病院の血管外科になるべく早く紹介することが必要だったため、会長挨拶も事務局長の全国の討論状況についての説明も聞けなかったというのが正直な事情です。今の山口民医連を象徴するような事態であったと思います。
したがって、方針に賛成はしたものの、十分に討議に参加したとは言えないので、あまり報告することもありません。
それでもいくつか聞いた討論内容を紹介し、それとは別に今回の評議員会方針のなかで引き続きここは深めておきたいと思うことをお話します。
討論については2点あります。
① 2022年10月からの後期高齢者窓口負担2割化の影響が大きく、その事例報告が多数集まっており、全国及び各地で記者会見をしているということです。山口民医連もこの調査には参加していますので、ぜひまとめて県内の世論に訴えたいと思います。
② 医師の働き方改革については、時間外労働として病院の日当直が計算されないような働きかけが各地で進んでいるわけですが、これはやはり医師が自分で自分の首を絞めていることになるのではないという意見が出ていました。具体的には福岡医療団の医師がそう言っていました。
同時に大都市部は実は医師不足だとは言えない状況だという発言もありました。別の場所での京都民医連幹部の発言ですが、医師供給はここ数年で俄然良くなって、医師採用には全く困らないという話もあって、民医連として統一した情勢認識が成立しないように思えます。
それだけ私達にとって医師不足問題、医師の偏在問題は解決の見えない袋小路に入り込んでいる気がしました。
あるべき民医連医師像の具体化が10年間止まっているのもそれを背景にしています。とうぶん苦悩の道が続くと思います。
討論の中で印象に残ったことはそれくらいですが、べつに3点ほど評議員会方針のなかで重要と思ったことをお話します。
一つは医師問題の難問も含めて、地方自治体を重視することの決定的な重要性です。
昨年、杉並区長に当選した岸本聡子さんというまだ40代の環境活動家がいるのですが、この人が最近の著書「地域主権という希望 欧州から杉並へ 恐れぬ自治体の挑戦」で言っているのですが、「民主的な社会や経済への道は、植民地主義、排他主義、家父長制、人種差別といったものと、地域レベルから闘うことにほかならないのだという、根源的な気づき」があったとのことです。
気候危機や人権尊重の主戦場は地方自治体にある、地域主権こそ私達の戦略だということです。
そのような地方の復権の中にこそ、地方での医師不足も根本的に解決する道があるのであり、その方向を掲げて運動する中でしか、先進的な青年医師の獲得はないように思います。
どんなに苦しくても歯を食いしばって拠点を守ることが今必要だと思っています。
二番目に民医連の方針文書に「ケアの倫理」が登場した画期性です。
これは女性が歴史的に政治の場から排除され家事労働や家族の世話を押し付けられる中で、発達させてきたものの考え方や行動様式、つまり人と人の関わりを大切にして、相互援助(贈与と互酬)を基本にした生き方(最近では女同士の助け合いsisterhood として描かれることも多いのですが)を、「ケアの倫理」として、男女を問わず社会の基礎となる規範、より深く研究され学ばれて人類全体のものとすべきものとして向かい合わなくてはならないものとして認識されているということです。簡単に言えば「困っている当事者を最優先にして考え行動する」とも言い換えられることです。
「ケアの倫理」を強調することが、女らしさを称賛して女性差別を深めることにならないよう、きちんと考えかたを整理して「ケアの倫理」を普遍的な新しい倫理規範として確立して行くことを今回の評議員会方針は暗示しています。
ジェンダー差別の解消とは、女性の政治・社会地位の平等を求める「正義の倫理」の発展だけでなく、女性が歴史の中で育ててきた孤独をなくし平等に生きるための「ケアの倫理」の共有だといことでもあります。
注目して議論を盛んにして行きたいと思います。
三番目は無料低額診療をもっと普遍的制度として、公的病院、地域医療支援病院にひろげ、無低診空白自治体をなくすという方向性が評議員会方針の中で示されていたということです。
これについては共同組織との協力がぜひとも必要です。宇部・山陽小野田に事業所が偏っている山口民医連でも、事業所空白の県都山口市にソーシャルワークの拠点を医療生協健文会の山口市事務所としてたちあげることになりました。そのさい山口市の公的病院に無料低額診療の実施・充実を求める市民運動を医療生協・山口支部とともにとりくむことにしたい考えています。
そして、無低診が単なる医療費自己負担免除にとどまらず、生活全体を伴走的に支援するソーシャル・ワークの入り口になっていくことも課題としたいと思います。
この3つのことは、評議員会の討論が、各地の実践報告のみを求めるというスタイルでなかったら発言したいと思っていて、実はできなかったことなので、ここで時間をとって発言させていただきました。
◯いっとき頻用していた「まちづくり」という言葉を自分がほとんど使わなくなっているのに気づく。
①主権を持った地方自治体、②自給を前提とした地方経済、③広域自治体から、より小型で住民自治の貫かれる「シン・基礎自治体」(これは僕の造語、医療生協や労働団体、商工団体もここに入る)の構築と目標が明確化したせいである。
◯ヨーロッパの「フィアレス・シティ(恐れを知らない自治体)」が何を恐れないかというとEUやその加盟国家による強権的な規制解除だった。
これはつまり、片山善博知事のもとで「地産地消・地消地産」を目指していた鳥取県の学校給食に対して、外国の大手食品資本がTPPを根拠にストップを掛けるというような話である。
あるいは自治体が公営水道事業を守ることに対して、外国の水道会社(例えばフランスのスエズ社)が水道自由化をうたった条約に違反するとして訴訟を起こすというようなこと。
地方主権こそ新自由主義が主敵としているものなのだ。
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