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2022年11月16日 (水)

永続的にAが勝利する場面はBとCが必ず引き起こす大災害と戦争によってやって来る

医療生協健文会の「地域福祉戦略部」の同僚である森山さん(看護師・社会福祉士)が東京の大規模社会福祉法人「すこやか福祉会」から依頼された実践報告講演会は大変意義のあるものになったょうである。

おそらくアマルティア・センの「ケイパビリティ・アプローチ」によるといっていいのだろうが、出発点の不平等を乗り越えて、障害やハンディがあろうとあるまいと誰しも獲得する可能性は平等でなくてはならない、そのために限界なく目の前の困難をどこまでも支援するいう姿勢は、経営的制約でしたくてもそれができない悔しさに悩む社会福祉士さんを励ましたかもしれない。
「どこからそのモチベーションが湧いてくるか」という質問があったと聞いたので、これについて、今の自分が考えていることを、上記講演の僕なりのスピン・オフとして書いておきたい。

『この、一人の人間をすぐ目の前にいる困難者の支援に向かわせる「強制力A」は、人類の歴史の中に常に存在していた。どの時代にでも認められる共産主義的要素といっても差し支えはない。

同じように弱い者を支配するor強い者には巻かれようとする「強制力B」も絶えず存在している。

さらにこのような人間社会に常にある強制力はもう一つあって、「物・金・資本を際限なく集めよう」とする強制力Cである。

このABC3つの強制力の混合割合が時代の特徴となる。
これはオルタナティブな史的唯物論と言っていいかもしれない。
今はBとCの合体が圧倒的に強い時代である。

柄谷行人はこれを資本=国家=ネーション(強制力Aの退化したもの)の強力結合体と言っている。=はイコールではなく化学記号の=と思っていただきたい。

BとCの連合軍を打ち負かしてAを優勢にしようという運動はこれまで人類全体を救おうという普遍宗教としてごく短い時間だけ現実化したが、ずっと負け続けてきた。

ただ強制力だからなくなることはない。

今後、より永続的にAが勝利する場面はBとCが必ず引き起こす大災害と戦争によってやって来る。
この場面で勝利するためにすぐ目の前にある困難者の支援に向かわせる「強制力A」を「隠れ切支丹」のように守り洗練させて準備しないといけないのである。

参考文献 柄谷行人「力と交換様式」岩波書店2022年力と交換様式

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