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2022年9月25日 (日)

ロールズの「財産所有制民主主義」

「積ん読」を解消する一環として、三連休最後の今日はジョン・ロールズ「公正としての正義 再説」岩波現代文庫2020年を少し読んだ。

すぐに飽きる。

そこで後半の第4部に52章に「マルクスのリベラリズム批判に取り組む」という短い文章があり、ここがこの本への興味を引きつないでくれるものではないかと思い読んでみる。

割と面白い。

関連して検索してみると、比較的最近の以下のような論文にぶつかる。
『ロールズの制度的正義論と労働者管理型企業の位置づけ  大阪大学准教授 遠藤知子』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nenpouseijigaku/71/2/71_2_125/_pdf/-char/ja

簡単に言うとロールズは、資本主義を前提とし再分配政策を中心とする福祉国家を「福祉国家型資本主義(welfare state capitalism)」と呼んで否定した。

それに対置してロールズが主張したのは、市場経済と私的所有が認められた上で、生産手段と労働能力(教育・訓練された技能)を分散させることを通じて人々の対等な地位を保障する「財産所有制民主主義」であり、その現実的な形態としてミルの言った「労働者管理型企業(worker-managed firm)」を重視していることがわかる。

そこからいま日本に広がり始めた労働者協同組合や医療生協のロールズとの接点が見えてくるし、さらに中小規模の協同組合型組織だけの問題ではなく大規模な企業システムを含む経済の中枢への民主的コントロールの制度化も展望できそうである。つまり、今の資本主義をどう変革するかという課題をロールズは論じているのである。

こう考えるとこの本も面白くなりそうだ。

*福祉国家型資本主義は、小さな階層が生産手段をほぼ独占するのを許容するのに対し、財産所有制民主制の背景的制度は富と資本の所有を事前に分散させ、そうすることで、社会の小さな部分が経済を支配したり、また間接的に政治生活までも支配してしまうのを防ぐように働く。
**ロールズが「公正としての正義」を実現する体制とするのが、生産手段の私的所有を認めながらもそれを初期の段階で平等主義的に分散させる財産所有制民主主義、または民主主義と競争的市場を前提に「生産手段が社会によって所有される」リベラルな(民主的)社会主義である。

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