今総代会の開会に当たり一言ごあいさつ申し上げます。
2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略は、ロシアの残虐行為が日々明らかになり、かつプーチン大統領による核使用の脅迫が繰り返される状況で継続しています。同時に日本国内では惨事便乗型の憲法9条改悪策動、実際の軍備増強が、「改憲翼賛議会」とも呼ばれる状況の中で強まり、すでに沖縄・奄美の南西諸島には対中国戦争を想定したミサイル配備が進んでいます。(具体的には陸上自衛隊がすでに奄美大島(鹿児島)、宮古島にミサイル部隊を配備済みで、2022年度末に石垣島、23年度に沖縄本島(うるま市)へ新設して沖縄本島の南北の海峡をカバーするミサイル網が完成する予定です。)
また2年来の新型コロナ・パンデミックは第6波がなかなか終息せず、経済的な被害も拡大の一途をたどり、コロナと戦争の影響による物価上昇が激しく国民生活の破壊が止まりません。
もちろん年々激しくなる自然災害がありながら、気候危機対策が一向に進まず、国連の政府間パネルIPCCが唱える「2025年をCO2排出のピークにし、2030年には50%に、 2050年には実質ゼロに」目標の達成にほど遠い状況で、21世紀末の気温上昇3度が確実とさえ言われています。
そしてジェンダー被害の根絶も掛け声ばかりで、女性の人権侵害が、(離党したとはいえ)まさに自民党議員などを先頭にして止むことがありません。
こういうとき私達としては、「ロシアは国連憲章を守れ」という世論を強めるとともに、ウクライナが不正・急迫の侵略に対し必死に抵抗しているいまこそ、国連の圧倒的多数を占める旧植民地諸国を中心に真の安全保障である「人間の安全保障」を打ち立てることが求められています。日本が核兵器禁止条約を批准することはその中でもきわめて大切なことです。
コロナと物価上昇、格差拡大のなかで国民のいのちと生活を守る上では直ちに消費税を減税し、同時に大企業の莫大な内部留保に課税することが喫緊の課題になっています。
気候危機は、山口県を筆頭にして東京一極集中によって疲弊した地方を地域循環経済の確立によって生まれ変わらせることが、そのまま災害甚大化にも備えることとなり、回り道のようでも真の解決策に見えます。
こうした中、6月22日告示、7月10日投開票の日程で参議院選挙が予定されています。
自民、公明、維新、国民が巨大与党を形成して悪政の限りを尽くしているなか、医療生協の要求を意気高く掲げて臨みたいと思います。皆様のご活躍を心からお願いするものです。
以上、ごく簡単に総代会のご挨拶を申し上げましたが、残りの時間を頂いて、すこし私自身のことを話すことをお許し頂きたいと思います。
医師である職員は70歳になると役員に選任されないという規定があり、私も今年70歳になりましたので、今期をもって退任致します。
今後は一医師として勤務を続ける予定ですが、このような場で皆様にご挨拶するのはこれが最後で、今後あまりお目にかかることもなくなりますので、ほんの短い時間ですが、いま私が発見しているものについてお話します。
振り返りますと、人格なき社団だった山口健康文化会の時代から、あいだに1990年の医療生協健文会の発足を挟んで合計44年間くらいは役員を務め、とくに2006年から16年間は理事長の職にありました。
そのなかで、おおよそ医療とはこういう構造で出来上がっているのだなあと思っているのがこの図です。基本は「患者中心の医療」ですが、それを形成する要素は中心に3つあります。
一つは患者さんの全体像を知るということです。正確に疾患の診断をするということ自体一生かかっても極められないことですが、それだけではなく患者さんがいま体験している主観的な「病(やま)い」の像を探ることが大切です。これがないと患者さんの全体像を把握することになりません。
そして次には病気や健康について患者さんとよく話し合って同じ目標を共有することです。それができれば、実際に利用できる最新の治療法や生活支援資源をリアルに探さなくてはなりません。科学的で安全な治療を実施できることも一生ものの課題ですが、ともかくこの3つの繰り返しが医療の日常なのです。
さらにその過程を通じて大事な視点が2つあります。一つは「健康の社会的決定要因」、つまり病気になったり病気が悪くなったりする最大の要因は患者さんの貧困と孤立にあるという視点です。
もう一つは病気の経過がどうであれ医師・医療機関と患者の関係をよくするということの常に努めるということです。
この合計5つの要因はいずれも重要ですが、最近私は最後の医師・医療機関との関係については、「関係が良い」という曖昧な表現でなくもっと踏み込んで表現するべきだと思うようになりました。つまりソーシャルワークと医療生協組合員間の互助(助け合い)を組織として「実装する」ことだと考えるようになりました。これはすなわち「伴走型の支援」というものであります。これこそが患者中心の医療の土台なのだと今は思っています。この間地域福祉室の創設を重視したのもそういう意味があります。
次に、視点をぐっと広げて医療生協の社会の中での位置づけに移ります。おそらく皆さん耳慣れないかと思いますが、私が考えているのは、医療生協は「基礎自治体」の一つにならないといけないということです。
これは私達が活動する舞台として地方自治体をもっと重視する発想でもあります。その地方自治体に意味のある影響を及ぼす有力な住民の組織を基礎自治体と呼べば、いくつか重要なものが浮かび上がります。
中でも重要なのは中小企業を結ぶ組織です。すでに中小企業振興基本条例というものが制定されており、中小企業の活躍を地方自治体の目標とすることは地方自治体の基本方針となっています。
同様に、今後「生活保障基本条例」の制定を私達が地方自治体に迫り、住民の生活保障を地方自治体の目標にするということをはっきりさせれば、それを担う組織として医療生協は地方自治体のなかの重要な要素、つまり基礎自治体になっていくだろう、そしてそういう道を目指すことで、地方自治体を変えていくことができ、地方自治体の新しいあり方も創造できるだろうと考えています。
話が長くなりましたので、地方自治体の新しいあり方についてのこのスライドの説明は省略します。
最後に医療生協を「基礎自治体」にしていくとき、やはり2つの大事なことがあります。一つは団体自治、つまり地方自治体の応援団ではなく、毅然として言いたいことは言う組織であること、もう一つ、住民自治 つまり内部の構成員の主権と民主主義が貫かれているということです。特に職員組織は企業特有のピラミッド型の権威勾配をどうしても伴う組織ですので、その中で構成員の主権と民主主義をどう貫くか、つまり自主管理という話になるのですが、相当に難しい難しい重要な課題になると思います。それでもそれを作り上げないと生きた組織にはなりません。
以上、私見を混じえたものですが、私の30年間の役員生活の振り返りを述べさせていただきました。
最後に長期にわたってご指導ご協力いただいたことを組合員の皆様、職員の皆様に心からお礼申し上げます。真にありがとうございました。
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