2021.8.28 医療生協理事会挨拶
延々と続く大雨に振り回され続けたような8月でしたが、皆さま特にお困りのことはなかったでしょうか。
今後の災害対策を、健文会の各事業所でも組合員活動でも本気で整備しなければならないですね。
まず協立病院を自主的な避難所として機能させ、そのうえで既存の行政側の避難所と対等に連携しあえるようにしてみてはどうかと考えます。そうすれば今ある行政側の避難所が抱える問題もより具体的に詳細に把握できるのではないでしょうか。
東京のコロナ感染については、特に医療供給体制の崩壊が目を覆うばかりになっています。政府が「酸素ステーションを作る」というのでどんなものだろうと不思議だったのですが、酸素投与を上限にしたプレハブの簡易病棟のことでした。まさに「野戦病院」ですね。確かにこれを各病院の駐車場にたくさん作ると、病院本体から動線分離できて便利かもしれません。
当面の対策としては必要かもしれませんが、ここであまりに粗末なものを医療施設として許可してしまえば、これをきっかけに本物の病院の設置基準の引き下げが行われてしまうのではないかという心配も生まれます。
本質的にはこれまでの病床削減を中心にして苛酷に進めてきた医療費抑制政策の破綻が国民の目に見えるようになったことはこの災害的事態のありがたくない功績に数えられるかもしれません。
この状態で東京周辺の民医連への支援が求められるのではないかと感じています。川崎協同病院では、昨年大けがをした和田先生という外科医が、数人の研修医を指導しながら一人で20-30人のコロナ入院患者の診療を続けているのだそうですが、医師研修もコロナ診療を経験したかしなかったで将来の力量に差が出るのではないかという気がします。
とはいえ、「では東京に支援を兼ねて研修医に送ってみるか」とは即ならないし、東京民医連も支援要求を明らかにしているわけではないので、今しばらくは自分たちの足元の警戒度を高めて、日常診療の充実に努めて待機するというところではあります。
さて、最近の話題では8/22投票だった横浜市長選挙があります。人口380万人、東京を除けば日本第一の都市です。人口はすでに大阪より100万人も多いのですが、そこで政治家経験のない48歳の元医学部教授が勝利しました。医師ではありませんが、コロナも関係する医療統計の専門家だということです。
本命候補が直前までの自民党の閣僚だったことを考え合わせると、まさに政府のコロナ対策の無責任さへの市民の批判がついに選挙結果として明瞭に現れてきたと言えます。
今後の選挙では立民・共産で医療専門家を推すパターンで行けば勝ち続けられるのではないでしょうか。医療専門家というところはまさに冗談としていっているわけですが。
内部に目をやると、将来構想が次第に固まってきました。30年ぶりに、大量とも言ってよい若手医師群の形成の展望が見えてきました。単に「いい医療をしたい」というレベルでなく「地域で気候危機と闘う」という若手医師の運動となることで確実なものになります。
それが現実の形をとるまでは60歳以上や70歳以上の高齢医師群がもう少し現状のまま頑張らないといけません。
もっと大事なことは、若手医師群、若手の職員群の活動をしっかり支えるために、ソーシャルワークと医療介護を分け難く一体のものとして提供することを、私たちの医療介護活動の特徴として打ち出しておくことです。
これについても今年は大きな前進を実現したいと思います。
経営困難に陥っている介護事業の現状打破においてもこの医療介護とソーシャルワークの一体化が鍵ではないでしょうか。
ただ、そうやって私たちの事業の未来像を描くわけですが、その未来像は気候危機という大変な難題のなかにあります。
その対策の中核として、地域での①エネルギー ②食糧 ③医療介護、という三つの領域の自給計画が挙げられるのですが、医療介護の自給はまさに私達医療生協がしている仕事の延長線上にあります。その領域では私達こそが主役です。
エネルギー自給では、化石燃料に頼らず再生可能エネルギーに全面的に切り替えるとがすでに技術的には可能になっています。課題はそれを地域エネルギー協同組合のような市民の共有物にすることです。ここでも医療生協は推進役になれると思います。
問題は食糧自給です。
いま世界の人口は77億人で、これが2100年には100億人になると言われています。
ここで、現在の人口を養っている農業は化石燃料を使って作る窒素肥料に頼っていることが極めて重要です。それによる炭酸ガス発生は、化石燃料によるエネルギー生産の1/5くらいと考えていいと思いますが、再生エネルギー革命が成功しても余分な炭酸ガス排出はスケールダウンしながら続くことになります。
合成窒素肥料を使わない20世紀の初め位の農業で養いきれる人口は25億人だと推計されます。
社会が先進国型になっていくと子どもの数が減って人口が減るとされ、2100年以降は人類の数は史上初めて全体として減少に向かうのですが、その方法で100億から25億に自然に減る時間は約300年間だと計算されています。つまり300年間気候危機と闘ったあとようやく炭酸ガス排出ゼロが可能な状態が来るということです。これは解決と呼べるものではないので、食糧問題には何かしらのブレイクスルーが必要です。
そのとき医療生協が病院給食を有機農業農家を選んで地産地消でやる、あるいは自ら有機農業の農園をもってかなりの部分を自給するなどは一つのアイデアです。
まだエネルギー問題も実際に全く解決に向かわない段階での拙い議論ですが、視野に入れておくべきこととしてご紹介しました。
以上多岐にわたって雑駁となりましたが、今回も熱心な議論をお願いして私の挨拶を終わります。
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