« | トップページ | »

2017年12月26日 (火)

今朝は、診療の隙間を見て、松原謙二 日本医師会副会長・日本専門医機構副理事長による 岡山大学関連病院長会議特別講演の記録を読んだ。
松原氏は広島大学医学部を卒業したあと、開業医をしながら東京大学教育学部、大阪大学法学部を卒業したという異色の人で、そこを買われて上記の要職についているのだろう。
 
医師の専門分化と、それと裏表の関係にある総合診療医養成の、双方の必要性を踏まえた上で、大都市部と人口減少地域の医師の適正配置をどう進めるかという議論なのだが、雑で志の低いお話が展開されている。要するに、古い医局制度の復活で医師を拘束しようということにすぎない。僕がこの講演をそのように評価する、象徴的な事柄については最後に書こう。
 
だが、こうした俗論を克服していくには、どういう議論の建て方が必要かを改めて考えさせてはくれるものである。
 
人口減少地域の激しい医師不足に喘いでいると、国家的な強制力で地方に医師を配置する以外の解決法はないように見えてくる。そうしないと医師はどんどん大都市部に吸収されるだけだと多くの人が思うのは無理もない。
 
しかし、そもそも、大都市部と人口減少地域の2極化は政治的に作りだされたもので、大都市でのインフラ建設の集中は鉄鋼メーカーやゼネコン、不動産業者が求めて現実化していることに過ぎない。その上に乗って、商業・サービス業の集中も起こっている。
 
地方の人口減少、大都市部の人口集中は、現在の日本の産業のあり方としても運命ではない。
ここ当分の日本社会の人口減少はもはや引き戻すことのできないことだが、過密と過疎地域の対立や不公平は政策によって解決可能な、且つ望ましく合理的なことである。
 
ここが重要なところだが、医師の人口減少地域への傾斜配置は、まさにこの対立と不公平の解決のために先行的に打たれるべき政策であり、住民の生活のための投資の一環として取り組まれるべきことである。医療・介護・教育、農漁業、エネルギーの自給のための投資こそ人口減少地域を蘇生させる具体的方策だからである。
そのための政策上の合意形成に向けた熟議や実験が必要だ。これがまちづくりにほかならない。
 
しかし、医師不足で困っている、また医師が過労死に追い込まれているのは人口減少地域だけではなく、大都市にも共通したことで、絶対的な医師不足の解消も同時に追求しなければならないことである。現時点で医師を増やしても大都市部に行ってしまうので無意味だという主張にはならない。
 
さて、松原氏の議論の次元の低さの象徴的なところは、医学部卒後数年の学位仕事が、医師を医学者として科学的に思考する存在に育てるものであり、それが看護師や技術者、労働者から医師を区別するもの、医師が世間から尊敬されるさ理由だ、未来永劫そうでなければならないと語っているような部分である。このレベルで医師政策、医療政策が語られるのを読んでいると悪寒がする。
具体的な名前こそ上げていないが民医連と徳州会についての根拠のない攻撃の質も極めて低い。「そんなところに医師の1/3が集まったら日本の医療はどうなるのでしょうか。みんな自分の組織の利益のために使い捨てです」
一体自分が何を言っているのかわかっているのだろうか。

|

« | トップページ | »

コメント

以前先生が副会長をしておられる(た?)組織で事務をやっていました。安心してください。まともな人間なら医者だからという理由で尊敬するなんてまずありません。一緒に働いているとドクターのみなさんがこちらを下に見ているのはよくわかります。こちらも当然心からの尊敬などしていません。医者は指示を出させてなんぼですから、こちらもうまく立ち回っているんです。世の中、先生のような高尚な方ばかりではないのです。大切なのは、そのような多数の医者(それにあきあきした病院職員および患者)を巻き込んで、どうやってよい社会に向かって進んでいくか、ではないでしょうか。それこそ魔法ですが、当面必要なのはヒロイズムではなく、その自覚のないヒーローだと思います。先生の手腕にご期待申し上げます。

投稿: 腐ったリンゴ@元病院事務職 | 2017年12月27日 (水) 13時36分

率直なコメントありがとうございました。

退路を絶って、発言して行くしかないというけついでいます。

今後ともよろしくお願いします。なんとなく、選挙演説ふうですが。

投稿: 野田浩夫 | 2017年12月28日 (木) 21時51分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: :

« | トップページ | »