マイケル・マーモット「The Health Gap」
マーモットさんの新著「the health gap」は、彼がシドニー大学医学部の学生の頃に近くの教育病院の精神科外来でみた光景から始まっている。
悲惨を絵にしたような、貧しく家庭内暴力に打ちひしがれた女性患者に 「じゃ青い錠剤を止めて、この赤い錠剤をのみなさい」 と言って帰してしまう精神科医。
「えっ、それだけ」 という表情を浮かべた医学生に、彼は 「これ以外になにが出来るんだい」 と言う。
病気が生まれる環境が変わらないままで患者をそこに帰していいのかという疑問が彼を突き動かして、精神科への興味を捨てさせる。
「この本はあの荒涼とした精神科外来から始まった私の長い旅の結論である」 と書かれてしまっては読まないわけには行かないだろう。
精神科の先生には申し訳ない記述かもしれない。
「精神科医は中欧なまりの英語でしゃべると決まっている。オーストラリアにおいても、そう」と書いているのには最初から笑わされる。
中欧はフロイトがいたウィーンだろうし、もしかすると一文無しでロンドンに流れてきたユダヤ人のマーモットさんの祖父がいた場所なのだろう。
http://www.amazon.co.jp/The-Health-Gap-Challenge-Unequal/dp/1632860783
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