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2016年3月30日 (水)

雑誌「世界」2016年4月号(P129-139) 坂口一樹(さかぐち かずき)「「自助」へと誘導されてきた医療・介護」

1:日本の高齢者医療制度を考えると1973年施行の「老人福祉法」から始まっている。

この制度では70歳以上の老人医療費自己負担分(それまでは3割から5割)は全額公費(税)負担となり、自己負担はゼロだった。高齢者も保険料は従来の健康保険の枠組みで払っていた。

2:これが1982年「老人保健法」で、老人患者本人に定額自己負担が設定された。そのほかの財源は公費(税)が30%(後に50%)、70%(後に50%)は各健康保険組合の拠出金(老人保健拠出金)だった。この点が福祉から保険へといわれるゆえんであるが、高齢者は従来の枠での保険料を払っていたので、高齢者医療保険とは呼べない。

その後、数年おきに自己負担額の引き上げが行われ、2001年には定率の1割、相対的な高所得者は2割負担となった。

3:2006年には「老人保健法」を廃止して「高齢者医療確保法」とし、その下に「後期高齢者医療制度」を作った。
これによって75歳以上の高齢者をその他の医療保険制度から切り離して、独立した保険制度に囲い込むこととなった。自己負担以外の費用は公費負担50%、他の健康保険からの拠出40%、75歳以上の高齢者の保険料10%としたので不完全ながら独立した高齢者医療保険制度と呼べるものになった。

独立した高齢者医療保険制度というのは、75歳以上の高齢者が充実した医療内容を望めば自らの保険料を増やす以外にないという制度である

4:その後、この流れは2014年に成立した「医療・介護総合推進法」の中に包含されていく。ここになると医療・介護一体化しての保険はずしである。

この流れを概観するとき、「福祉から保険へ」と言う言い方もできるが、「限りない自助への誘導」と言ったほうがより適切である。

これによってどれほど医療費が激しく抑制されたかは、雑誌「世界」2016年4月号(P129-139) 坂口一樹(さかぐち かずき)「「自助」へと誘導されてきた医療・介護」に詳しい。

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