ジェイン・ジェイコブズ 「発展する地域 衰退する地域 地域が自立するための経済学」ちくま学芸文庫2012
いっときはよく読まれていたらしいのだが、僕には未知だったジェイン・ジェイコブズという女性。
1916-2006、都市活動家という肩書きである。都市活動家?
ずっとまえにちくま学芸文庫で「発展する地域 衰退する地域 地域が自立するための経済学」2012を買っていたのを、ふと読み始めた。
ある場所にこもるのに手ごろな厚さの本を選んだら、無意識にこの本を手にしていたのである。
読み始めるとものすごく面白くて一気に360ページ中の100ページを読んだ。
あらゆる経済的拡大の根底に都市の「輸入置換」あるいは「輸入代替」がある。 輸入置換、輸入代替とはこれまで輸入してきたものを自前で作り始めること、あるいは自前で作った何かで代替させること。
鍵は国単位で考えなくて都市単位で考えること。
国単位で考えると輸入置換が生きたものとして捉えなくなる。 この断言がジェイソン・ジェイコブズの真骨頂ということだろう。
萩にとって広島の酒を輸入するのでなく萩の酒を作ることが経済拡大の鍵であった。千福よりも東洋美人なのである。
販路を奪われた広島にとって、鹿児島の焼酎を輸入するのでなく広島独特の焼酎を作り出すことが課題になる。魔王でなく魔鯉なのだ。
輸入置換に成功した都市は、周囲に都市地域を作り出す。工業と農業と商業が混交した活気ある大人口の地域である。 世界最大の都市地域を持つのは東京である。
著者はその典型としてロナルド・ドーアの「シノハターあるむらの日本の肖像」を詳しく紹介している。シノハタは、実在の村にドーアが付けた架空の地名。都市地域こそ拡大のエンジンである。
しかし、都市中核が輸入置換をやめたとき、都市地域だけが生き残ることはできない。都市中核抜きの計画はありえないのである。
いや、ずっとこもっていたわけではない。
大半は理事長室で読んでいて、後輩のS君が総合医研修プログラムについて画期的な提案を持ってきたときは、幸運にも理事長室で本に埋もれている姿を演出できた。 http://www.amazon.co.jp/%E7%99%BA%E5%B1%95%E3%81%99%E3%82%8B%E5%9C%B0%E5%9F%9F-%E8%A1%B0%E9%80%80%E3%81%99%E3%82%8B%E5%9C%B0%E5%9F%9F-%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E3%81%8C%E8%87%AA%E7%AB%8B%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%B3-%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%96%E3%82%BA/dp/4480095020
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