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2016年2月27日 (土)

2016.2.27 医療生協理事会挨拶  

だいぶ春めいてきて、あちこちで梅の花が咲いている季節になりました。
インフルエンザがいまごろになって流行の気配です。AとBが半々くらいで、脳症、心筋症という合併症も多いという印象もあります。高熱あるいは筋肉痛という症状があればなるべく早めに受診されたほうがよいと思います。発熱後、短時間すぎて迅速キットで診断できなくても、咽喉にイクラのような濾胞があることで早期診断できますのでご安心下さい。

この間、大きな情勢の変化がありました。
2月19日の5野党(民主、共産、維新、社民、生活)の4項目合意です。
(4項目は、①安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とする②安倍政権の打倒を目指す③国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む④国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる限りの協力を行う)
これは、明らかに「野党は共闘」という広範な市民の声に民主と維新が動かされたということなのですが、現在の日本をナチスが政権を握って全権委任法でワイマール憲法を停止した1932―33年のドイツと重ねてみれば、ある意味ぎりぎりの時点で対抗勢力が統一してファシズムの完成を防ぐ道が残されたということになろうかと思います。

この情勢変化に政権側も敏感に反応して、昨夜は菅官房長官が消費税引き上げの延期を口にしたりすることにもなっています。

*菅官房長官“税率引き上げて税収増えなければ意味ない”
TBS系(JNN) 2月27日(土)2時17分配信
菅官房長官は、来年4月に予定されている消費税率の10%引き上げについて、税率を引き上げて税収が増えなければ意味がないという考えを示しました。
 「かつて橋本総理大臣時代に税率を引き上げてですね、まさに結果としては税収が下がってきたという経験がありますから、そういう過去の経験からしてですね、税率を上げて税収が上がらないようなことというのは、ある意味で当然のことじゃないでしょうか」 
 一方で、菅長官は「リーマンショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施をする」とも話していて、現時点では来年4月に引き上げるという政府の方針は変わっていないと強調しました。(26日23:06)

情勢はこのように動いていますので、私たちも戦争法廃止の2000万人署名をはじめとしてさまざまな活動を工夫していかなければなりません。
その工夫の一環ですが2月24日の山口民医連理事会には東京からSEALDsの二人が訪ねてきてくれたので、1時間ほど懇談しました。
相当な世代差のため僕たちにはどう対話してよいのか手探りの状態でしたが、SEALDs作成の動画を見たあと、いろいろ質疑がありました。
こちらの自己紹介もなく質疑が続くなかででSEALDsの一人が「自己紹介もなしに、いきなり政治論議をすることは私にはおかしく思えるんです。お互いの生活ぶりがわかってやっと政治の話を始めるものだとおもっています」といわれたので、これは年長者がたしなめられたことになるのだろうなぁと思えたことでした。

主な話題は、戦争法を廃止する、立憲政治を取り戻すというような政治的な課題と、学生や若い世代一般の貧困化からくる経済的な課題を結び付けていくことの実際の難しさのことでした。
聞いてみるとやはりSEALDsに加わる学生は基本的に「溜め」(湯浅誠がアマルティア・センのいうケイパビリティの訳語として使った言葉)のある学生が多く、彼らが友人と話していてブラックバイトや奨学金の負担の重さで話が盛り上がっても、憲法が話題になるとさっと引かれてしまうことが多いことに当惑しているということでした。二つの課題を統一した組織を作る難しさで若い層のぶつかっている困難には大いに共感しました。これは健文会の運動でもあることですから。

私のほうからはTVドラマ「わたしを離さないで」の第6話で憲法13条「個人の尊厳・幸福決定権」が登場人物の口から熱く語られたことについて、憲法13条と臓器提供のためのクローン人間が共存できないとするこのドラマの本当のテーマは、生命を提供する兵士の存在と憲法13条は絶対両立しないことではないかということを話題に取り上げてみました
しかし、若い人はTVを見ないものだということを忘れていました。それでも上智大学の中野晃一教授が市民の運動の土台として憲法13条人間の尊厳の意義を強調していることは重要だと思っているという学生らしい反応はあったので救われました。

さて、資料につけたのは、貧困と不健康の因果関係を証明したイギリスの社会疫学者マイケル・マーモットさんの世界医師会長就任演説です。日本医師会が訳して発表したものです。

私としては、この8年間ずっとマーモットさんの仕事を追っていて、ある重要文献は私が日本で初めて訳したというものもあったりしたので、世界医師会長になったというだけで、何か新発見のように扱われるのはあまりいい気持ちもしないのですが、演説の中身はすばらしいので、ぜひ早目にご一読いただきたいと思います。

最後のところでパブロ・ネルーダ(チリ共産党員、1971年ノーベル文学賞)の詩の一句が引用されています。
マーモットさんの祖父母は東欧から無一文でロンドンに来たユダヤ人でした。
そこでも苦しい生活は続き、両親は学校にもいかずオーストラリアに移民しました。その両親の元でマーモットさんはシドニー大学を卒業したのですが、呼吸器科研修医としてシドニーのギリシャ・イタリア移民コロニーの貧困と不健康の関係に気づき、公衆衛生に専門を変えてアメリカに移ります。
そういう経歴が、パブロ・ネルーダを引用させているのだろうと思います。

この演説のなかでも私が「やっぱりそうだ、自分の考えでよかったのだ」と思うのは
『私はすでに非常に励まされております。カナダ医師会の私の友人たちは、生活状況が健康にどのように関連するかを一般市民と議論するために、カナダ全土の公会堂で集会を催しました。』 というくだりです。

社会疫学の知識が力を発揮するのは、医療従事者がそれを知った時ではない。健康の社会的阻害要因に苦しむ当事者たちがそれを知った時、現実的な力にそれは変わるのだろうと最近強く考えてきたからです。
では、緊迫した情勢の中、熱心なご討議をお願い致します。
(議長 指名)

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