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2016年1月13日 (水)

SDHとソーシャル・キャピタル

健康の社会的決定要因SDHは、2003年のWHO欧州事務局のパンフレットでは8つが確かな事実=ソリッド・ファクツとしてまとめられたが、その後、2010年のマーモット・レビューでは住居や環境が加わっていった。

研究が進むにつれもっと増えるに違いない。

そのなかでソーシャル・キャピタルはどういう位置づけになるのだろうか。

2003年のパンフレット、2010年のマーモット・レビューではそれについての言及はないと思う。もっぱらイチロー・河内氏らアメリカ派が強調するのである。

僕自身それをきちんと考えてこなかったので、SDHといえばソーシャル・キャピタルだというふうに話を展開する人とは気があわないなぁと思ってきた。

今日、「省察:大都市の総合診療」を読んでいると、長嶺由衣子・近藤克則氏は

『SES(社会経済的地位)が重要と分かっても変えることは容易でないが、SDHのレベルになると、変えることができるものも増えてくる。

その中でもソーシャル・キャピタルは、他者からの支援なので変えやすいものとして注目される。 ソーシャル・キャピタルは、(他のSDHとは違い)社会参加して初めてわかる、その人の属するコミュニティがもつ特性なのだ』 とさらりと触れている。

ちょっとだけ、目からうろこの感触。

言ってみれば 分析するためにどうしても静的・固定的に捉えられがちになるSDHを、他者の関わりという動的な別の視点で捉えなおすとソーシャル・キャピタルという概念が生まれてくるのかもしれない。

分かりやすく言えば、メタSDH。

あるいは個人レベルのSDHと、コミュニティレベルのSDHの区別。

または、認識と実践の違い。

アマルティア・センの「ケイパビリティ」を、湯浅 誠が「(援助資源の)溜め」と変形して表現したときも同じような視点の変化があったような気がする。

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