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2015年12月 7日 (月)

「民医連の医療理念と地域包括ケア」素描

昨日は岐阜民医連医師団会議にお邪魔して「地域包括ケアの中の中小病院の医療活動と医師養成」と題してお話しした。

「国連の健康戦略の4段階」、「民医連の医療理念は雑種である」という新しい二つのアイデアを得ていたので張り切って向かったのだが・・・。

生来の滑舌の悪さに加えて、デヴィッド・ハーヴェイの新自由主義論に触れるという無謀な項目を急に追加したので、分かりにくいものになってしまって岐阜の皆さんには申し訳ないことをした。

豪華昼食までご一緒させてもらったにもかかわらず・・・。

帰り道の新幹線のなかで、振り返って、ここは変えておいたほうがいいと思えた部分を書き直してみた。

さっそく、今日の宇部協立病院の全職員ミーティングで話して、分かりやすいかどうか試してみるつもり。

・・・・・・・

民医連の医療理念と地域包括ケア

1:民医連の医療理念
• 病気を労働と生活から捉える
• 民主的チーム医療
• 医療は患者・住民と医療従事者の「共同の営み」である

• しかし、これらは後知恵的に健康観、組織論、医療観と整理されてはいるが、自然に形成されたもので体系的なものではない

2:野田の仮説:純粋な民医連医療の理念体系と言うものはない
外からの影響と本来あったものの合流による雑種だ

3:本来あったもの・・・?
ナバホ・インディアンなどにみられる共同性か

人間の本質としての社会共同性・・・それを発展させる運動の一部が民医連運動?

4:儒教の影響・・・医は仁術、大医は国を医す

5:マルクス主義との合流・・・われわれの診療所は働くものの診療所だ
(プロレタリア(=無産者)診療所)

6:その後の歩み
• 日本国憲法との合流・・・25条生存権
• 世界人権宣言との合流・・・健康権
• 国連の健康戦略との合流・・・健康の社会的決定要因SDH、HPH
• 障碍者福祉運動との合流・・・「生活モデル」としての地域包括ケア                =無差別平等の地域包括ケア

*国連の健康権運動・健康戦略と障碍者福祉は実は健康権実現運動のなかで同じ歩みをしている。健康戦略のもとでの障碍者福祉といえる。

附:障害者福祉と医療の合流=医学モデルから生活モデルへ
ICF「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版」  2001年  
日本語訳 平成14年8月5日社会・援護局障害保健福祉部企画課

•障害と生活機能の理解と説明のために,さまざまな概念モデルが提案されてきた。それらは「医学モデル」対「社会モデル」という弁証法で表現されうる。
•医学モデルでは,障害を個人の問題として捉える。主な課題は医療であり,政治的なレベルでは,保健ケア政策の修正や改革が主要な対応となる。
•社会モデルでは障害を社会によって作られた問題と捉える。主な課題は障害のある人の社会への完全な統合である。政治的なレベルにおいては基本的人権の確立が課題となる
•この二つのモデルを統合して「生活モデル」
とする

7:ところで、国連の健康戦略自体も変化している

8:健康戦略1  プライマリ・ヘルス・ケア PHC

• 1978年 アルマ・アタ宣言で始まった
 主に途上国対象
「2000年までにすべての人に健康を」  Health For ALL
そのための住民の政治参加が重視された
• しかし米ソ冷戦のもとで、2大国に支持された途上国の独裁政治を批判できず、政治参加は出来なかった
• 最終的には選択的PHCへ収斂: 
  =ワクチン実施への住民動員

9:健康戦略2 ヘルス・プロモーションHP

1986年オタワ憲章 (先進国対象)
  「健康のための基本的前提」
  ①平和 ②住居  ③教育  ④食物 ⑤収入  ⑥安定した生態系  ⑦生存のための資源  ⑧社会的正義と公正
・・・今日のSDHに向かう視点は既に網羅されていたが、ただちに新自由主義に侵食され、個人のエンパワーメント=自己責任 優位のものに変形された(例:「健康日本21」)
10:ヘルス・プロモーションが新自由主義のために変質したあとの巻き返し・・・健康の社会的阻害要因解消を目指したヘルス・プロモーション

• 1997年 ジャカルタ宣言
• 2005年 バンコク憲章
• 2008年 WHO健康の社会的決定要因(SDH)委員会最終報告
   「Closing the gap in a generation」
 
11:第4の健康戦略 
新しいプライマリ・ヘルス・ケア(2008)
先進国、途上国の区別なくグローバルなものとして
①人間中心のプライマリ・ケア(総合診療=家庭医療)
②ユニヴァーサル・ヘルス・カヴァレッジ(国民皆保険)
③すべての政策に健康の視点を(SDH,HIA)

12:安倍政権がユニヴァーサル・ヘルス・カヴァレッジを成長戦略としている=保健医療2035
キーワードは「リーン・ヘルス・ケア」
・・・よりよい医療をより安く(国民が受け入れられるぎりぎりの安上がりの医療の模索)
• 国民皆保険のノウハウの途上国への輸出 
   製薬、医療機器、生命保険、電子機器産業の成長戦略へ
13:新しい健康戦略も新自由主義のために破壊されるのか?

14:新しいプライマリ・ヘルス・ケアと「生活モデルによる地域包括ケア」と合体させることによって今度こそ成功させることができるかもしれない

15:地域包括ケア(福祉と医療の一体化)は二つある。

  政府が成長戦略として進める新自由主義的地域包括ケアと

  私たちの無差別・平等、かつ「生活モデルによる地域包括ケア」

16: 理念としての植木鉢モデルと大樹モデルの比較

17:幸手モデルの プラットフォーム図
18:地域-在宅 連携拠点を推進力にした「居場所作り+地域診断」の関係図
19:中野智紀医師:「幸手モデルの地域診断へ向けたアセスメント調査は、日中独居者調査でも、高齢者実態調査でもありません。

地域との対話を通じた信頼関係の構築であり、対象地域における地域ケアシステム構築へ向けた、新たな対話の始まりです。」

20:終わりに目標は経営的な成功、事業規模の拡大ではない。
あくまでプライマリ・ヘルス・ケアの一環として地域包括ケアを発展させる国民的運動の促進者であること。
必要なのは地域連携のプラットフォーム作り

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コメント

ご講演ありがとうございました。中座して愛知民医連に向かいました。途中まででしたが、私の知らなかったことが多く、とても面白かったです。うちの県連事務局長は新自由主義のところはよくわかった。面白かったといっていました。ただ、若手の事務幹部には少し難しかったようです。社会科学の基礎がない職員にはまた、別の展開を考える必要があるかもしれません。先日の四役会議でも感じたのですが、民医連の医療理念とされる「民主的集団医療」(先生は民主的チーム医療と書き直されています)に対する現時点の見解が不明確なように思います。なぜ、使わなくなったのか、「チーム医療」でいいのか。次期総会の方針案で解明するように事務局長にも提案するつもりです。先生の講演の中で「介護」への言及が少ないように感じます。介護分野の職員から見るとそこが自分たちとの関連でわかりにくいのではないでしょうか。
ありがとうございました。

投稿: 髙田一朗 | 2015年12月 8日 (火) 09時12分

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