プライマリ・ヘルス・ケアへの回帰
国連とWHOが提唱するユニバーサル・ヘルス・カバレッジについて検索していて一つの文章が目に留まった。 今年 佐久総合病院で開催された「日本国際保健学会 東日本地方会」のホームページにあったものである。
プライマリ・ヘルス・ケアPHCは1978年のオタワ憲章でHealth for All という高い目標を掲げて出発した。
しかし当時は米ソの冷戦時代で、ほとんどの途上国には米ソのいずれかに支持された独裁政権があり、WHOが健康のための住民の政治参加をいくら唱えても全く実現性がなかった。そのため、すぐにワクチン接種を主な活動とする選択的PHCに 変質してしまったのだが、そこに変化が現れているとしている。
選択的PHCの立場からはオタワ憲章の立場は包括的PHCと呼ばれる。
「PHC回帰の流れ
PHCは、2000年までという目標を達成できなかったという意味で、批判を浴び、また早くも1979年には「選択的PHC」が暫定戦略(Interim Strategy)としてWalshらにより提唱され、理論的にも現場レベルでも論争や混乱を招いていました。
しかし、WHOは、21世紀の世界の保健課題を達成する上で、改めてPHCの遺産を肯定的に捕らえ、取り組む姿勢を示しています。
その意味で2008年には、WHOから歴史的に重要な2つの文書が出されています。
一つはPHCの21世紀版、“World Health Report Primary Health Care: Now More Than Ever” (世界健康白書 プライマリ・ヘルス・ケア:それはこれまでにも増して必要とされている)
もう一つは、 “Closing the gap in a generation: Health equity through action on the social determinants of health“ (世代内の健康格差を縮める:健康の社会的決定要因への働きかけを通しての健康における公正の達成) これは「健康の社会的決定要因」という近年、重視されているPHCと密接に関連する考え方です。
そして21世紀中葉に向かう現在の日本は、世界に先駆けて「少産多死」という人口転換 、いわば第4の健康転換期 に突入しており、財政も含めて大変な時代である。 だからこそ、PHCについて考え直すことが非常に重要な時期であるといえます。」
そこで、国連のユニバーサル・ヘルス・カバレッジに関する決議(2012年12月)http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/67/L.36
を読んでいると、確かに包括的PHCという言葉が出てくる。
PHCへの回帰という潮流は確かにあるのだろう。
9. Also recognizes that effective and financially sustainable implementation of universal health coverage is based on a resilient and responsive health system that provides comprehensive primary health-care services・・・・
この新しいPHCがどのようなものであるか、またそれと関連があるらしいユニバーサル・ヘルス・カバレッジをどのように評価すべきをさらに考えてみる必要がある。
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