岩城けい「さようならオレンジ」ちくま文庫
昨夜は午前3時まで10月分のレセプト作りをやっていて、少し眠ったらすぐに出張にでた。
穏やかに晴れた紀伊半島の上を飛びながら、岩城けい「さようならオレンジ」ちくま文庫を読んでいると思わず涙が滲んで来て始末に困った。
主人公の一人である日本人主婦が学校に通うため託児所に預けていた1歳3ヶ月の娘が乳幼児突然死症候群SIDSでなくなってしまうという条りである。
オーストラリアに難民や移住者としてやって来た女性二人が、英語を学ぶ中で世界や社会のあり方、自分の生き方を考えるという短い小説だが、優れた作家だと思う。
嬉々として講義を準備しハンドアウトを作り出張に飛び回っている夫が好きなことをしているだけで周囲を不幸にする存在として描かれているのもはっとさせられる。
日本人とアフリカ人の女性の物語が二つ平行して進むと思って読んでいたものが、実は違ったというサプライズが最後にしかけられているのは、もう一つの主題が言葉であるということに関連して感心してしまう。
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