柄谷行人訳 エリック・ホッファー「現代という時代の気質」ちくま学芸文庫2015/6
どんな本を読んでも今につながるものが見つかる。
たまたま地元の本屋で見つけた柄谷行人訳 エリック・ホッファー「現代という時代の気質」ちくま学芸文庫2015/6という薄い文庫本を読み始めると、1965年の文章なのに、今に関連するものにぶつかった。
「未成年の時代」でホッファーはこれまでの歴史の中の大きな進歩はほとんど子供に近い人々がやったことだという。
動物を飼いならすこと、植物を植えなおすこと、車や帆や鋤を発明すること、灌漑、発酵、冶金も、戦争もみんな年少者が、たぶん遊びの過程で成し遂げたことであるだろう。
なるほど、学生のデモが政党のあり方まで根本的に変えた2015年夏はそういうものだったか。
だが、ホッファーが言いたいことは別のところにあった。 現代の問題は、熱狂的で原始的な少年の心性が社会の大きな変化にあたってどんな老人にもよみがえることなのだ。
ここでナショナリズムは現代世界の少年犯罪だ、という言葉を彼は引用する。 ナチスも、スターリン主義も少年犯罪だったと彼は言う。きっと安保法制も少年犯罪なのである。
そういう時だから、政府系不良少年たちに向き合う民主主義系大人はいたずらに少年化せず、成熟の道を歩くことが望ましい。
まとめてみると、あまり人に喜ばれない結論になった。
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