雑誌「現代思想」2015年10月臨時増刊号「安保法案を問う」 大井赤亥(おおい あかい)「運動を掴む政治学のために 熟議・左派ポピュリズム・『戦後民主主義』」と今朝の朝日新聞
雑誌「現代思想」2015年10月臨時増刊号「安保法案を問う」の後ろのほうに大井赤亥(おおい あかい)「運動を掴む政治学のために 熟議・左派ポピュリズム・『戦後民主主義』」という文章がある。
「左派ポピュリズム」という言葉が初耳だった。 だいたいポピュリズムとは、右翼が大衆の後ろ向きの感情を煽り組織するものではないのか?
大井の文章でも、ヨーロッパでは政権に参加した社会民主主義が新自由主義の側に引き寄せられてしまい「脱政治化された合意」が社会に広がった結果、極右だけが大衆に語りかける存在となってしまった、とある。日本の橋下「維新」もこれに該当するものである。
しかし、シャンタル・ムフという政治学者はこの状態を抜け出すためには左派もポピュリズムを形成すべきだと主張している。スペインの「ポデモス」やギリシャの「シリザ」がこれに当たる。それは大衆への迎合ではなく大衆の意志の尊重という民主主義の大道に位置するものである。
言ってみれば誰しもがその社会の最高意思決定者であるべきだという立場で「治者と被治者の不一致」に抵抗してその一致を追求し、前者を作り出している「一国代議制的デモクラシー」を批判するものである。
同じ傾向は、デヴィッド・グレーバーや木下ちがやにあり、彼らも「下から」の民衆的要素を含んだ「別のポピュリズム」を発見している。木下は2011から始まる脱原発デモ、2015年夏の反安保法制デモの高揚のなかにそれを見ている。
ただし、日本では中道左派・社会民主主義が壊滅的状況にあるので、両者を見捨てるのでなくその再建運動と共同することが必要であることがヨーロッパと違う、というのが大井の主張することである。
これからさき注目しておくべき議論だ、と思っていたら今朝の朝日新聞に欧州ポピュリズムの大きな解説が載っていた。
そんなに一般的な話だったのか。
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