雑誌「現代思想」11月号の立岩真也氏の文章 メープルヒルと石井みどり
山口から広島の実家に帰るとき山陽自動車道を東に向かっていくが、広島県大竹市を過ぎてすこし広島よりに行くと、左手、山側に自動車道に覆いかぶさるような洒落た病院が眼に入ってくる。
メープルヒル病院である。
急にこの病院のことを思い出したのは、雑誌「現代思想」11月号の立岩真也氏の文章を読んだからである。
例によって、立岩氏の文章の論理は追いにくい。しかし、考える材料をたくさん提供してくれる。
その材料を列挙してみよう。
①歯科医師で自民党参議院議員である「石井みどり」(広島県出身)は日本歯科医師連盟から違法の迂回献金を受け取り、公職選挙法違反の疑いをもたれている。
*ウイキペディアから引用
日歯連迂回献金疑惑
2015年(平成27年)2月、政治団体である日歯連が2013年(平成25年)に支出した政治資金のうち、石井の後援会である「石井みどり中央後援会」に合計9500万円が渡っていたことが判明した[3]。政治資金規正法によれば、政治団体間の寄付の上限は年間5000万円となっている。このため、日歯連は、いったん別の政治団体に9500万円のうち5000万円を寄付し、そこから即日、石井みどり中央後援会に同額の5000万円を寄付することで、法律の制限を回避した。後日、日歯連から直接、石井みどり中央後援会へ残りの4500万円も寄付されている。これは、脱法行為である「迂回献金」と見られる
同年9月30日、東京地検特捜部は、政治団体間の寄付の上限を超えた迂回寄付をし、収支報告書に虚偽の記入をしたとして、政治資金規正法違反容疑で日歯連前会長ら3人を逮捕した。
②石井みどりは参議院厚生労働委員長である。
③同時に、歯科医の石井みどりはなぜか「日本精神科病院協会政治連盟」の重点候補でもあり、2013年には500万円の献金を受けている。
③石井みどりは2014年5月設立の「認知症医療の充実を推進する議員の会」の事務局長でもある。同会は、地域包括ケアが在宅や介護に偏らないで、精神科病院と介護との間に「循環型」のシステムが成り立つことを設立趣意書で主張している。
④2014年7月1日、参議院厚生労働委員会は石井みどり委員長を先頭に厚生労働省幹部も伴って、この文章の冒頭に掲げたメープルヒル病院を視察している。
⑤メープル・ヒル病院の理事長は石井知行といい、石井みどりの兄で、日本精神科病院協会理事である。
ここで石井みどりが精神科病院政治連盟と深い関係にある理由が読者の目に明らかになる。
⑥ ④の視察に当たって石井知行理事長は、厚生労働省の政策立案が思いつきでなく、医療ー介護の循環型でなくてはならないということを強調した。その後の懇親会には県知事なども同席した。
⑦厚生労働省は2012年9月に、認知症対策5カ年計画「オレンジプラン」を発表していたが、2014年11月安倍首相は突然にそれを見直すと言い出し、認知症国家戦略策定を指示し、オレンジプランは途中で廃止され、2015年1月に「新オレンジプラン」が発表された。
その変更の重点は、精神科病院の役割の増大である。
いたずらに在宅医療や介護にかたよるのでなく、精神科病院での患者拘束の意義がなお大きいといっているのである。
塩崎厚労相は「医療介護の連携の『循環型』システムの確立」という言葉でそれを表現している。じつに「認知症医療の充実を推進する議員の会」の設立趣意書、そして石井知行理事長が視察団に述べた言葉と同じである。
⑧「晋精会」と言う精神科医の安倍晋三講演会があり、今年になって活動が活発化している。2月12日と6月11日の2回会合を持ち、いずれにも首相が出席している。6月11日の会合では首相側から精神科側に国民にきちんと理解してもらえる情報発信をするようにという要望が出された。
その翌6月12日 日本精神科病院協会の定時社員総会があり、会長は協会の政策の発信に努力すると発言した。
オレンジプランがなぜ突然に新オレンジプランに変わったのかよく分からないでいたが、その変更の中での精神科病院の動きが見えるような気がする。
そして、安倍政権と精神科病院業界を結ぶルートとして違法献金まみれの石井みどり参議院議員=石井知行メープルヒル病院理事長の兄妹がいることもほぼ明らかである。
これまでは、その建築の面白さだけをながめていたメープルヒル病院が全く違って見えるだろう
| 固定リンク
« まだ読んでいる途中だが、神島裕子「ポスト・ロールズの正義論 ー ポッゲ、セン、ヌスバウムー」ミネルヴァ書房 2015/6はお勧めである。 | トップページ | 神島裕子「ポスト・ロールズの正義論 ーポッゲ・セン・ヌスバウムー」ミネルヴァ書房2015/6 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 雑誌 現代思想 6月号(2016.06.04)
- 内田 樹「街場のメディア論」光文社新書2010年(2016.05.11)
- 「『生存』の東北史 歴史から問う3・11」大月書店2013年(2016.05.10)
- デヴィッド・ハーヴェイ「『資本論』入門 第2巻・第3巻」作品社2016/3 序章(2016.05.04)
- 柄谷行人 「憲法の無意識」岩波新書2016/4/20(2016.05.02)
コメント