雑誌「世界」11月号 「気候変動特集」 ナオミ・クライン「今そこにある明白な危機」
雑誌「世界」11月号は「気候変動特集」。
ナオミ・クライン「今そこにある明白な危機」は必ず読んだほうがいいと思える。
僕自身がこれを読んだだけで元気になった感じがしたし、気候変動が自分の課題になった気がしたので、やはり評論家というものは必要だ。
実はナオミ・クラインも、これまで気候変動の問題は複雑すぎてまともに向かい合って来なかったと告白している。
しかし、あるとき気候変動の恐ろしい破局を食い止める対策が、さまざまな破滅的なもののちょうど対極にあることに気づいて、気候変動について考えることが急にわくわくすることに変わったという。長い間そのことに気づかなかったのだ。
すなわち、気候変動によって各地で生じ始めている大災害にきちんと対応を迫ることが社会を変え、さらには気候変動を防ぐことにもつながっていくという良性のドミノ倒しである。
以下は大半が引用である。
安全で公平な社会をつくること、すなわち膨大な数の人々を貧困から抜け出させること、彼らにきれいな水や電気など今著しく欠けているサービスを、今より非中央集権的で民主的なモデルに基づいて提供することが、気候変動を真に巨大な危機、「地球のためのマーシャル・プラン」を発動すべき危機だと宣言し認識し、今生じている災害への対応をダイナミックに進めることから可能になる。
それは、民主主義を阻む企業の影響力を減少させ、弊害だらけの新しい自由貿易協定を書き直し、資金難にあえぐ大量輸送機関や低価格住宅などの公共インフラへの投資を促進し、エネルギーや水道などの基本的サービスを民営化から取り戻すことになるだろう。貧富の格差も縮小し、良質な雇用が多数創出され、民主主義が土台から再活性化される。
気候変動は人類が一丸となって今よりいいところに飛躍するバネだ。
気候変動は進歩派がかって手にしたことのない強力な論拠になりうる。
同時に、どんな危機にも今の政治家は人々の生存の危機を救おうとはしない、草の根の運動しか頼るものはないというさめた認識と覚悟も求められている。
・・・こう書くナオミ・クラインは気候変動版の「災害ユートピア」(レベッカ・ソルニット)論者になっているように見える。
しかし、2009年のコペンハーゲン国連気候変動会議の無力な合意、「産業化以前からの気温上昇を2℃以内に抑える」はきわめて危険なものである。
それは悪性のドミノ倒しのようなもので、現在は産業化以前より0.8度の上昇だが、この2倍以上を許容するともはや制御不能な気温上昇に突入する可能性が高い。合意が拘束力のない状態だと4℃以上の上昇になるだろう。6℃になることも考えられる。そうなれば人類の絶滅まで行く。地球温暖化が今そこにある明白な危機であることはこれ以上明白になりようがない。
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