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2015年8月 2日 (日)

地域包括ケア討論集会での私の説明原稿

僕個人の備忘用に、以下のような長いものをアップすることをお許しいただきたい。

「地域包括ケア学習討論集会問題提起 読み上げ原稿

副会長で、医療部の副部長をしている野田と申します。
それでは、問題提起についてなるべく簡潔に説明します。

この間の討議を受けて、問題提起の本文と若干表現が変わったことを述べるかとおもいますが、この集会自体が、「討論集会」という民医連の諸交流集会の歴史の上で初めてのネーミングになっていることからも、ご推察いただけるように、まだまだ未知の課題に光を投げかけることが目標の集会です。

すでに解決の方向が明らかになった問題に上から方針を指し示すというのとは無関係だということの現れとして、お許し願いたいと思います。

スライド 1 
集会の獲得目標です。
1:地域包括ケアの名のもとに政府・厚労省が狙っているものと私たちがめざす無差別・平等の地域包括ケアの違いを明らかにする
2:無差別・平等の地域包括ケアをめざして、貧困・格差と闘っている民医連の実践について交流する。
3:県連・法人の中長期的方針の確立について議論を深める。
としています。熱心なご参加をお願いするものです。
スライド2
第1章は地域包括ケアをめぐる情勢ですが
各都道府県において「地域医療構想」の策定作業が開始されています。
内閣は2025年の必要病床数を115万~119万床と推計しており、現在の135万床からみれば20万床、15%の削減という大掛かりな計画になっています。
看護では特定行為の研修制度が10月からスタートし、訪問看護師の8割を特定行為の実施者とすることを想定しています。「在宅において看護師がより自律的に医療を担う」、
「医師が在宅療養開始時の指示を行い、日常的な医療管理は看護師が行う」スタイルがめざされているわけです。

スライド3 続き
市町村は「地域包括ケア計画(第6期介護保険事業)」を策定し、推進しています。
その特徴は「規範的統合(理念の統合)」の名の下に、市町村の計画・方針に事業者を従わせるという管理的な姿勢です。
人口減少地域では「コンパクト・シティ」の形成とも連動して、新たな公共投資計画、市街地から外れる過疎地域のインフラ整備の放棄ともつながっています。
また地域包括ケア推進の具体策として、「新規4事業」を制度化していますが、
「地域ケア会議」を最も重視して、これを通じた統制を図っているといえます。
また、経産省「アクションプラン2015」は「介護システムを補完・充実する保険外サービスの創出」をうたって、介護分野のいっそうの商品化、市場化を推進しようとしています。

スライド4
第2章は「民医連における地域包括ケアの実践」の紹介です。
(1)東京の東都保健医療福祉協議会
(2)長野県の上伊那医療生協・・・これは「いつでも元気」2015年8月号に記事になっていましたので記憶に新しいかと思います
(3)北海道勤医協の札幌西区病院
(4)栃木民医連
を典型的な事例として選び、本文に詳しく述べていますので、ぜひ討論のなかで活用していただきたいと思います。

スライド5

第3章は 民医連の無差別・平等の地域包括ケアの課題と展望を述べています。
そもそも地域包括ケアが意味することは
医療介護従事者にとって、患者を病院のなかの受動的な存在から、自律して地域のなかで生活する能動的な存在として捉えなおすという大きな「視点の移動」=パラダイム・シフトを意味するものでした。そういう視点、枠組みの変化がめざすケアの形が地域包括ケアであったわけです。
厚生労働省がよく使う、この説明図にそれを載せると、この青い丸から、赤い丸への変化に他なりません。

スライド6
そういう変化をよくあらわすものが2001年に発表されたICF「国際生活機能分類(WHO)」だと考えられます。
それは「医学モデル」と「社会モデル」という用語を使って今後の医療のパラダイム・シフトの方向を示していました。
医学モデルは,障害を個人の問題として捉え、主な課題は医療です。
一方、社会モデルは障害を社会によって作られた問題と捉え、主な課題は障害のある人の社会への完全な統合です。
この二つのモデルを統合して「生物・心理・社会的」モデルとして用いるところにICFの画期的な提案があり、民医連が営々と追求してきた健康観、医療観の一致もあったわけです。
スライド7
あえて追加すれば
「高齢化により多様な問題を持つ患者が増えたので社会モデルが必要になった」のは表面的理解で、
高齢化とは関係なく存在する患者の多様な問題を医学的な問題だけに限定せずまるごと取り組もうとするスタイルが主流となり「社会モデル」と呼ばれたとするべきだと思っています。

スライド8
こうした健康観、医療観のパラダイム・シフトがおこるのと時を同じくして、日本社会は世界に先駆けて超高齢社会となっていきました。2015年には 126万人だった年間死亡者数が2025年には 160万人以上に増える多死時代を迎えることも確実となりました。
これに対処するため、中学校区程度の大きさのコミュニティを単位にして医療・介護・生活支援・住まい・予防を結合させる政策が必要となり、スライドに示したような五つの花びらが結合したもの、これは医療と介護と保健を一体のものとして捉えた広島県の公立みつぎ病院の実践の流れのなかにあるものですが、政府はこれを地域包括ケアと呼び始めました。
地域包括ケアの本来の意味とは少しずれますが、この時点ではこのスライドのような理解で大きな違いは生じませんでした。

スライド9
しかし、政府の思い描く地域包括ケアはその後大きく変貌して行くことになります。

最初は拡大する一方の介護保険費用の強制的な縮小が前面に出てきました。たとえば厚生労働省のある高官は2000年創設の介護保険の目標だった「介護の社会化」は幻想に過ぎなかったと断定して、介護保険によるサービスの縮小の必要性を唱え、その政策を地域包括ケアと呼びました。

政府の構想はそこにとどまらず、地域包括ケアは TPP加入、労働法制改悪とならぶ新自由主義戦略の大きな柱の一つとされ、医療・介護・福祉全体の営利化・市場化がたくらまれていきました。
そして、地域包括ケアの「包括」の意味は上からの「統合」だという解釈を新たに示すようになり、医療・介護について、垂直・水平・規範・経営の4統合を唱えるようになりました。当然、大資本による経営的統合こそが最終目標です。

スライド10


そして「地域包括ケア研究会」の最新の報告書(2014)が「植木鉢」モデルを示すにいたりました。
それは土台に個人の財産や収入に基づく自己責任を置き、そのうえに、住居、ついで生活支援を重ねていき、最後に専門家によるサービスとしての、医療・看護・介護・リハビリテーション・保健・予防を載せるというものですが、これはまさにこの順番にそってケアの全てを商品化、市場化するというプログラムを示したものに他なりません。
住まいの部分が、すでにサービスつき高齢者住宅、有料老人ホームの大量建設という形で大資本の市場になっていることはご存知の通りです。

スライド11
ローソンが、ロゴを「まちのほっとステーション」から「まちの健康ステーション」に変えたのも、住まいの上の生活支援の領域の市場化に大資本が姿を現したものと理解するべきものです。
これはまちに本来あるはずの協同を引き剥がして市場や資本に渡してしまうものといえます。

スライド12

今年の医学会総会、医療界の最大のイベントですが、そこにクロネコヤマトの社長が堂々と登壇して、見守りサービス、すなわち生活支援の大手になるという同社の計画を述べました。
地元商店の商品や自治体発行の雑誌を高齢者に届けて、同時に安否確認するという事業もすでに始まっています。
また、薬剤師による対面配薬という原則をはずして、薬の配達も自分たちにさせろとも言いました。
私のいる山口県では、「道の駅」とクロネコヤマトが組むことで、「福祉型の道の駅」を作るという試みが始まっています。

本来、自治体が責任を持ってやるべき生活支援が、こうして大資本にまる投げされて行く地固めが着々と進行しています。

スライド13
最近はイオンがその大型スーパー内にディサービスを設置するという計画を発表しました。植木鉢でいえば、ついに葉っぱの部分に大資本が現れたということになります。


スライド14
これらは私たちが私たちの「無差別・平等の地域包括ケア」を、理念にとどめず、形あるものとして体系的に示し、構築する必要が急速に高まっているということを意味するものだと思います。

スライド 15
 私たち圧倒的多数の国民や医療・介護従事者の描く地域包括ケア像は植木鉢モデルとはまさに180度違うものです。それは「健康権という大地に医療・介護・生活支援が深く根を下ろした大木」のような「人権モデル」のイメージです。患者・障害者の自律と社会参加も、高齢者の尊厳ある死もこの大木の果実だということができます。

スライド16
人権の大地に立つ大木の比喩を続けるなら、地域包括ケアという大木だけではなく、教育,文化、生産、労働、自治、環境という大木も同時にあり、これらが一体となって森を形成していくのが「まちづくり」です。
けっして、地域包括ケアだけがまちづくりを担うものではないことは改めて私たちが自覚しておくべきことと思います。


スライド17
そこで地域包括ケアをめぐる政策的争点についてみてみると、前提として、介護保険縮小でなく抜本改善だということがあります。
 その上で政策的争点は以下の3点に集約されます。
 ①すべての必要な人へのサービス提供か、貧困者排除か
 ②担い手を充実するのか、削減するのか
 ③営利・市場化か公的保障か
です。

地域包括ケアをめぐる膨大な市場に対して大手企業も戦略的に参入し、ブラック企業も虎視眈々と、大きく広がっている高齢者の貧困層をターゲットにしています。
今後、この膨大な高齢者の貧困にどう立ち向かい人権を保障していくかが、今後の民医連の医療・介護活動の中心的なテーマになります。最も困難な住民・人々の地域包括ケアの担い手として、民医連と共同組織が、その存在意義を発揮していくことが求められる時代です。
 
併せて、政府の地域包括ケアが、「規範的統合」を前提に、行政が上から押し付ける「集権型」「強権形」で推進されるのに対して、住民の意見が十分活かされ、地域の実態・要求に根ざした「参加型」で取り組まれるのかも重要な焦点となります。

スライド18
そこで 第4章は民医連の対抗戦略について述べています。

スライド19

そこでまず第一にしなくてはならないのは、介護事業所の展開計画を立てることだけに熱中するのでなくて、なによりも本物の地域包括ケアへの住民要求を形あるものにし、運動化することです。介護保険改悪に反対する市民運動を促進し、共同組織や医療生協の地域支部ごとに「医療・介護・生活のなんでも相談室」を常設することをめざすことなどの運動が戦略の前提になります。

スライド20
 その上で、①病院や診療所を結んだ医療ネットワーク、②在宅医療、訪問看護、介護、広範な生活支援の3領域が集まり結合して行くプラットフォームの形成が重要になります。

スライド21
そのプラットホームを支える三本の柱として県連―法人の合同した推進本部と、地域包括ケアを担う医療活動の新しいあり方と、共同組織と職員の地域の真ん中での協働があることを今回、とくに強調した思うものです。

スライド22
県連―法人の合同した地域包括ケア推進本部は
地域包括ケアを県連・法人の最優先課題と宣言して 三つの領域が一つに集まって協同する場(プ ラットフォーム)の創造に当たります。同時に
• 多職種・多事業所協働の推進
• 県連・法人の中長期計画原案の提示
• 県単位、市町村単位の地域包括ケアへの政策的提言
などを行っていきます

スライド23
共同組織と職員の地域における協働は
居住や環境の要因も加えた「SDH」諸要因の改善を意識的に追求するということが最も重要です。SDHの学習をこれまで積み上げてきたのは実はここに意味があったと思うべきかもしれません。
そのときHPH(ヘルスプロモーティング拠点病院・事業所)が重要なツールとして生きてきます。
とりわけ高齢者の貧困・排除・孤立をなくし、「誰一人孤独死や餓死をさせない」という決意を明確にし、スローガン化することを訴えたいと思います。
自治体や各種の市民団体との協働を進め、さまざまな生活支援事業・ボランティア活動を進めることも重要です。

スライド24
こうした徹底した互助活動の正当な助成を自治体・国に求めて行くことにより、彼らの用語で言えば、互助を公助に、正しくは公的責任に変えていくことができます。

スライド25
最後に最も重要なのは地域包括ケアを担う医療活動の新しいあり方の創造です。地域包括ケアの担い手としての中小病院や診療所の機能構築です。
その推進のため総合診療と地域連携室の強化が必要です。
また切れ目のない医療機能が発揮される機能分担も大胆になされなくてはなりません。
 加えて認知症ケア、緩和ケア、口腔機能ケア等を欠かせない機能として重視すべきです。

スライド26
民医連の中小病院は、診療所と一体になって、プライマリ・ケアに徹する総合診療へ力点を移していくことが求められます
診療構造は、病棟・外来・在宅がそれぞれ独立して活動するスタイルから、それらが一体となって切れ目のない医療機能が発揮されるよう機能分担のありかたを変えていく必要があります。
このような医療活動の構造の中に、慢性疾患治療、認知症ケア、緩和ケア、口腔機能ケアなどが欠かせない機能として組み込まれていきます。

スライド27
この構造は、そのまま、地域連携の三つの方向 
幅広い互助組織、病院群、高齢者施設・往診開業医
に結びつき、それぞれの役割を示すものであるということにも注目していただきたいと思います

スライド28
地域包括ケアを主体的に担う総合診療医の養成は、地域包括ケアを担う医療活動の新しいあり方の創造と一体の課題です。
地協単位に「オール民医連」で、民医連ならではの総合医養成プログラムを多様に実現する
民医連が呼びかけて「オール地域」、地域の中小病院、開業医院と住民が協力して総合診療医を育成する体制を作る

この二つを同時に追求することが求められています。


スライド29
第4章の後半は、当面重視すべき課題についてのべています。

サービスを一体的に提供できる大規模ユニット型の訪問看護ステーション
定期巡回・随時対応型訪問介護看護、小規模多機能型居宅介護
介護予防の二面性を見据えた対策
認知症ケア
住まい対策の強化
などを取り上げていますので、ご論議いただきたいと思います。


スライド30

以上きわめて広範で、私たちにとって、まだまだ未知への挑戦であることについて、可能な限り短時間でお話しました。
 まとめますと、
政府・厚労省の新自由主義「植木鉢モデル」に対抗して、人権(生存権・健康権)を土台にした地域包括ケアを築いていくことを、今日の民医連の最優先課題として提起しました。
 私たちの対抗戦略としては、運動を前面に打ち出すこと、事業としては、①各領域協同のプラットフォームの設置、②共同組織の活動の持つ可能性、③地域包括ケアを担う病院・診療所機能の構築、それを主体的に推進する総合医養成などについて問題提起しました。
ぜひ、充実した討議になるようにお願いして、私の問題提起の説明を終わります。

ご清聴ありがとうございました。」

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