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2015年8月28日 (金)

雑誌「病院」医学書院7月号「地域創生に病院は貢献するか」・・・伊澤 敏(佐久総合病院)事例 「佐久総合病院の地域づくり

雑誌「病院」医学書院7月号「地域創生に病院は貢献するか」を改めて見直す。

「地方消滅」などの著書がある元総務大臣 増田寛也が登場して「病院を中心とするまちづくり」を語るあたりからは、成長戦略としての医療の産業化、地域医療連携法人によるヘルスケア産業の展開が、この号の基調であることが分かる。
 簡単に言えば営利的「病院門前町」形成の勧めである。病院門前町の考えは、産業医大の松田晋也氏などから民医連にも流れ込んでいる。安倍首相はアメリカのメーヨークリニックによる都市形成を具体的に例示しているが、それは松田氏などに教えられたものだろう。

ただし、それが本当にその可能性を信じた積極的なものか、日本の成長戦略に万策尽きたところで欺瞞的に主張している消極的なものか見分けるのは難しい。産業の成長は無視しても、金融を通じて国民略奪を進めようとするのが新自由主義の特徴だから、後者の立場は当然にありえるのである

しかし、この雑誌で注目すべきは佐久総合病院の伊澤 敏統括院長が登場して、メディコポリスについて解説している部分である。(事例 「佐久総合病院の地域づくり」)

メディコポリスは、若月俊一の仕事から川上武が着想を得て提唱したものである。(「農村医学からメディコ・ポリス構想へ  若月俊一の精神史」勁草書房1988年)

それは簡単に言えば
①医療福祉システムの整備 
②教育施設の充実 
③住民の生計を確保する産業振興
を満たす構想のことである。

それを考える際に重要なことを伊澤ははっきり指摘している。
「メディコポリスという言葉は『病院を中心とするまちづくり』と言った誤解を与えてしまいそうだが、若月の実践やそれに触発されて提示された川上の概念は『地域づくりへの貢献』である」

この言葉から民医連としてはHPH (health promoting hospital)運動 を矮小化して住民の健康づくり運動で停めてしまいそうな傾向への警鐘を読み取るべきだろう。

こうして伊澤の一文は、増田寛也たちの構想と対抗するものであることを明確にして、ある意味この雑誌の名誉を救っている。

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