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2015年7月25日 (土)

医療生協 7月理事会挨拶

今日は今年の総代会後の最初の医療生協理事会なので、率直な思いをぶつける挨拶を考えてみた。
                   
「6月の総代会後、初の理事会です。3時間の予定ですので、挨拶も短くしたいと思います。

ご承知の通り、情勢はきわめて緊迫しています。
7月16日衆議院で強行採決された安保法制案は、アメリカの戦争に日本が参戦することを可能にする、まさに戦争法案そのもので、国会での採決自体が、立法府が憲法を否定するクーデターに他ならない、違憲立法というべきものです。

7月20日には政治学や社会学系の著名な学者150人が賛同者3万4千人を代表して記者会見しましたが、私が親しくしているロールズ「正義論」研究の第一人者である川本隆史さんも前面に出てきて「憲法はピンチかもしれないが、ピンチはチャンスだ」と述べていました。
まさにその通りで、安倍首相の支持率は3割台に急降下しました。
22日に共産党の志位委員長は内閣支持率2割台なら採決不能になるという見通しを述べました。
「ともかく決め方があまりにおかしい」という国民の声が集まって行けばこれは必ず可能になると思います。
また、参議院を過半数で可決する、あるいは衆議院で2/3で再可決するのを防ぐことは、どちらも与党の10人ばかりが態度を変えればできてしまいます。7月16日の衆議院でさえ安倍総裁の専制的圧力のなかで自民党の二人が造反していますし、各議員の地元での対策を強めれば何とかなるはずだと私は思っています。来年に改選を迎える与党参議院議員の落選運動を今から始めようという声もあります。

こうした中でマスコミも姿勢が変わってきています。
朝日新聞も反省の色が見えます。とくに7月17日の記事、2004年から2006年にかけてイラクのサマワに派遣された自衛隊の精鋭5480人のうち21人が在職中に自殺し、うち3人が公務災害に認定されている問題で、当時現地で隊員のサポートに当たった自衛隊中央病院の精神科医師の証言は出色のものだったと思います(資料1)。
この精神科の医師は、21人という数字は氷山の一角に過ぎないといっています。
ともかく、この夏は安保法制の問題をまず第一にして、さまざまな活動を展開しなければならないと思いますので、理事の皆様のご奮闘を切に期待するところです。

その一方、医療・介護関連では、今週の新聞記事をみていて気になる記事が二つありました。
資料2は7月19日 日経新聞 1面、「イーオンが介護参入」です。流通大手イ-オンがその総合スーパー内にディサービスを大量に展開するとしています。これまで参入しているのは最大手でもニチイ学館400箇所程度で、イーオンほどの大資本はなかったのでこれは大ニュースだと思います。
もうひとつは資料3、7月20日 毎日新聞、「厚労省 療養病床の削減検討 狙いは医療費削減」という記事です。療養病床を老人保健施設にすれば一人当たりの経費を月45万円から月27万円に抑えられるという見込みで、現在の療養病床34万床を、最大(新名称「慢性期病棟」として)24万床まで減らせると厚労省は計画しています。これによって、行き場のない医療難民がまた大量にあふれます。

医療・介護の全てを市場化、商品化して公的介護保険や社会保障を大幅に縮小しようとする政府版の地域包括ケアが激しく動いているのです。
政府の骨太方針2015でも、社会保障費の削減は、医療崩壊を招いた小泉内閣時代の2倍近くに及んでいます。介護保険の負担増も目を覆うような激しさです。
これは私たちが健康権・生存権に根ざした無差別・平等の地域包括ケアの構築を急ぐ必要が急速に高まっているということを意味します。

そのことは、私たちが事業者として介護事業所の建設計画を立てることだけに熱中しないで、なによりも本物の地域包括ケアへの住民要求を形あるものにし、運動化することを優先するという姿勢をとれということでもあります。

そこでなるべく早く取り組みたいのが医療生協の支部ごとに「医療・介護・生活のなんでも相談室」を常設することです。私には、ここに鍵があるように思われてなりません。
これについては地域に埋もれている退職後の看護師さんたちに大いに協力してもらいたいとおもっています。
資料4は、協立病院の地域連携室長だった来島さんが退職後に宇部市内の今村というところでやっている「暮らしの相談室」に関するものです。宇部市内17番目の「ご近所福祉活動」として宇部市から助成金も獲得したそうです。これなどはずいぶん励まされることです。

ただ、ふと気づくと、健文会の病院や診療所の相談機能がずいぶんと低下しています。灯台下暗しということわざを地で行っているようなものです。

表面的なことでいえば、「医療の費用、介護保険のことなど、なんでもご相談ください」という類の掲示がどこにもありません。あってもまったく目立たないのです。
掲示していないくらいだから、事務職員が制度の相談にあたる研鑽を定期的に積んでいるということはまずありえません。

リニューアル後の診療所にいくと、立派な表札の「相談室」があるが、中には誰もいませんし、あまり使われている気配がありません。

協立病院は玄関わきにあった相談室が消えて、ずいぶん奥まった地域連携室に吸収されてしまいました。実は専任のMSW医療ソーシャル・ワーカーがいない状態です。

MSWがきちんと機能していないと医者も大変困ることになります。
私自身の経験で言うと、最近、一人暮らしや老人施設から救急車で運び込まれた高齢者を普通に治療して、さぁ退院というときに、家族との間にトラブルを抱えることが多くなっています。医師として医学的には今回の危機は乗り切ったと思って退院の許可を出します。普通ならそこから入念な退院の調整が始まります。
患者さんは超高齢の方ですから比較的単純な肺炎や心不全にしても結構入院期間が長くなりますし、入院期間が長いと体力が階段を降りるように低下します。すると一人暮らしが続けられなくなっていたり、もとの老人施設には帰れなくなってしまっているからです。
しかし、そこが念入りに調整されず、家族から見れば医師の決定を御旗にして退院を強制されているという感情を持つような結果に最近は結構なるのです。そういうときに退院前の病状説明に臨むと、最初からご家族が喧嘩腰になっていて、中小病院で病棟を担当しているのが嫌になるような言葉に出会うことも多々あります。ぐっと我慢して、そこから改めて退院準備を始めるわけです。

このあたりについて専務理事、常務理事に善処を依頼しましたからいずれ改善すると思えますが、地域包括ケアに打って出る前に自らの足場を改める必要も痛感するところです。

すこし、愚痴めいたことも言いましたが、憲法をめぐっても、医療介護をめぐっても大変な時期にぶつかっておりますので、この理事会でも熱心なご議論をよろしくお願いするしだいです。

以上で私の挨拶を終わります」

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