河瀬 直美の映画「あん」について、後でふと気づいたこと
河瀬 直美の映画「あん」について、後でふと気づいたこと。
樹木希林扮する老女徳江がどら焼き屋に現れたとき、満開の桜を指差しながら、「この桜誰が植えたの? 」と聞くシーン。
永瀬正敏がそっけなく「地元の人間じゃないんで」と答える。
なぜ挿入されたかわかりにくいこのシーンは何だったのかと考えていてようやく分かった。
映画の最後でハンセン病の療養所(多磨全生園)の鬱蒼とした森は、もしかすると、そこで亡くなった人たちのお墓がわりに植えた樹の大きくなったものではないかと思わせるシーンが出てくる。徳江のためのソメイヨシノの若木が新しくそこに加わる。
少女時代から療養所に収容された老女には、どら焼き屋のそばの桜も誰かの墓に見えたのかもしれない。
だから、「誰が植えたの」ではなくて「誰のために植えたの」と聞けばもっとわかりやすくなったはずだが、流石にそこまで親切には映画は作らないものだろう。
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