二つの「飢えの転化」
雑誌「現代思想」2015年6月号 篠原雅武×藤原辰史 対談
かっては「物は溢れているのに心は貧しい」という議論がある時代だったが、今は「明日、飢えて死ぬかも知れない」という時代に変わった。
その恐怖が、商品としての労働力のダンピングを許容させている。そして、戦争する日本にほのかな期待を寄せさせてもいる。
ナチス治世下のドイツ(第一次大戦後と第二次大戦中)もそんな飢えの支配する社会だった。 そこではナチスへの支持確保のためドイツ国民にとって二つの「飢えの転化」があった。
一つはユダヤ人や外国人のための強制労働収用所での飢えである。
もう一つは侵略先、穀倉であるポーランドやロシアの国民の飢えである。
だから、いま、ベンツなどに乗って喜んでいるヤツは、その会社がナチスの強制収容所の血を吸って経営を拡大し技術力を蓄積してきたことに思いを馳せて、自分がその共犯者であることをしっかり自覚しなければならない。
それはなかば冗談としても、現代日本の外国人労働者の劣悪処遇は別の形の強制労働収容所で、日本国民の飢えの幾分かはその外国人に転化されているのだ。
また、生活保護世帯の青年が自衛隊に入隊して戦争に行き幾分なりとも餓死の恐怖から免れるなら、その戦争の影響を受ける国内やどこかの国で代わりにその数倍の餓死が実現していることをよく覚えておかなければならない。
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