「コスモポリタニズム」メモ #2
「コスモポリタニズム」メモ #2
正義の条件をロールズの「社会的基本財の平等」でなく、センのいう「選択と到達可能性(ケイパビリティ)の平等」だと修正したとき、その平等であるべき選択と到達可能性可能性がどういう事柄に関していわれるのかを具体的に示したのが、マーサ・ヌスバウムのリストである。
それは健康権を構成する健康の社会的決定要因SDH8項目を具体的リストとして示したマイケル・マーモットの業績に比較されるようなものだろう。
マーモットは膨大な疫学研究を実証的にまとめることからそれを導き出したが、ヌスバウムの場合は思索と討論からと言う違いはあるが。
そうは言ってもマーモットも人間の研究に適当なものがない場合はサポルスキーのヒヒの研究を援用したりしており、センの影響を直接受けた思索的なところがあるのは、ヌスバウムにも似るのだが。
そこで、ヌスバウムのリスト10項目は以下のようなものである。 (用語は私流に修正)
1 寿命
2 健康(居住条件、栄養を含む)
3 生涯にわたって暴力を振るわれないこと・・・当然、兵士にならないことも含むだろう
4 感覚・想像力・思考の自由
5 愛情や愛着の自由
6 教育によって獲得される判断力・実践力
7 社会的包摂、自尊心の保障、居場所を持つ安心感
8 自然、他の生物種との交流
9 自由な時間と遊び
10 社会参加とその実効性・・・選挙に行くことができ、かつその投票が実際の政治に反映することなどをいうのだろう。また、地域のサークルに参加し、そこでの活動が実際に社会を変えていけるということも。
比較のためにマーモットの示した健康の社会的決定要因SDH8項目のリストをネガティブにみて社会的阻害要因として私流の用語で示しておこう
1 胎児期ー乳幼児期の境遇の悪さ
2 教育の不平等さ
3 失業の蔓延
4 労働の中の裁量のなさ
5 社会的な排除や貧困感、自尊心の剥奪
6 薬物乱用に陥る環境
7 不良な食生活
8 社会参加を妨害する公共交通の不備 多くは共通しているのが分かる。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 雑誌 現代思想 6月号(2016.06.04)
- 内田 樹「街場のメディア論」光文社新書2010年(2016.05.11)
- 「『生存』の東北史 歴史から問う3・11」大月書店2013年(2016.05.10)
- デヴィッド・ハーヴェイ「『資本論』入門 第2巻・第3巻」作品社2016/3 序章(2016.05.04)
- 柄谷行人 「憲法の無意識」岩波新書2016/4/20(2016.05.02)
コメント