雑誌「世界」6月号 渡辺 治「 『戦後』日本の岐路で何をなすべきか」
雑誌「世界」6月号には 渡辺 治「 『戦後』日本の岐路で何をなすべきか」が掲載されているので、真っ先にこれを読んだ。
渡辺先生らしいよく整理された切れ味のよい文章だが、中でも幾つか注目すべき記述がある。
一つは、「戦後とは何か」ということの解明である。安倍はじめ、自民党右派はそれを葬り去る策動を延々と続けているわけだから、これを明らかにしておくことは極めて重要である。
日本の軍国主義復活を阻止するということが「日本の戦後」だということをまず銘記しなければならない。
第一次世界大戦で敗北した軍国ドイツが再びナチスドイツとして復活した苦い教訓により、それは二重、三重に構想された。
第一に9条。軍隊を持たせないことは、いわば対症療法である。
第二に根治療法の①として、軍国主義を推進した絶対主義的な天皇主権を廃止し、国民主権を敷き、民主主義を徹底する。
第三に根治療法の②として、国民を貧困から解放し、国内市場を拡大する。これは侵略戦争衝動が、国民の貧困による国内市場の乏しさによるという認識があったからである。
第二、第三の元になる分析は、戦前マルクス主義講座派の分析に一致する。
注目すべき記述のもう一つは現在の護憲運動の現状について、これまで市民運動に特徴的であった反政党スタイルがなくなり、政党と市民運動が対等に協同するようになっているという指摘である。
さらに、もう一つは、安倍改憲を防ぐ運動の成否が、保守的な人々の参加にあるというところである。
いずれも鋭い現状把握だと言えよう。
渡辺先生は最後に「日本の『戦後』は未完であり、安倍などによって清算されてしまうことなく完成しなければならない」とむすんでいる。きわめて戦闘的な姿勢である。
韓国の市民運動と日本の護憲運動との連帯の深まりに注目しているのにも大いに頷けることである。
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