ガッサン・カナファーニー「ハイファに戻って」再読
ここ数日、バタバタと気にかかる宿題を済ませてしまった今、中断していた読書に戻ればいいのだが、こういう時は、胸が熱くなるような小説か詩を読みたい。
例えば、李恢成「見果てぬ夢」とか、ガッサン・カナファーニー「ハイファに戻って」のようなもの。
「ハイファに戻って」は、TVで小田 実が紹介していたのを小倉の老舗の本屋 金文堂に探しに行ったのだった。
...今覚えば小熊英二に似た繊細な感じの店員が、出版元の会社を褒めながら、どこからかさっと探し出してくれた。蒼樹社 「アラブ文学選」野間宏編集だった。
ガッサン・カナファーニー「ハイファに戻って」再読
1948年、イギリス軍とユダヤ人部隊が、元からの住民であるパレスチナ人を銃と大砲で追放し土地と家々をのっとり、イスラエルが建国された。
1967年イスラエルは突然に難民として暮らすパレスチナ人に故郷を訪れることを許可する。自分たちの成功を見せつけるためである。
その機会に自分たちの家があったハイファという町を訪れた夫婦には、その町から追い払われたとき残してしまった赤ん坊がいた。赤ん坊の生死も分からないまま20年が経ってしまったのだ。
家は昔のままに残り、ナチスによる迫害経験もある、イタリアから来たユダヤ人夫婦が入居していたが、その後のスエズ戦争で夫を失っていた妻はパレスチナ人夫婦を温かく家に迎え入れた。
なんと赤ん坊はこの夫婦に大事に育てられ、名前も変わって成人となっていた。今は彼女と息子の二人暮らしである。
彼は勤務からもうすぐ帰ってくるらしい。
心優しいユダヤ人妻は、子供がどちらの親に帰属するかは、子供の意思に任せようという提案をする。
息子が帰ってきた。彼はイスラエルの軍人になっていた。
・・・ここから、葛藤に満ちた人間のドラマが展開する。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 雑誌 現代思想 6月号(2016.06.04)
- 内田 樹「街場のメディア論」光文社新書2010年(2016.05.11)
- 「『生存』の東北史 歴史から問う3・11」大月書店2013年(2016.05.10)
- デヴィッド・ハーヴェイ「『資本論』入門 第2巻・第3巻」作品社2016/3 序章(2016.05.04)
- 柄谷行人 「憲法の無意識」岩波新書2016/4/20(2016.05.02)
コメント