柄谷行人「帝国の構造」青土社2014/7
年末年始の読書② 今日も病棟当番をしながら。
柄谷行人「帝国の構造」青土社2014/7
民医連の拠って立つ理念である健康権が、20世紀の資本主義の生んだ2回の世界大戦の痛切な反省から生まれたことはあきらかだが、それも2回の世界大戦の反省全体のごく一部に過ぎない。
反省の全体はロシア革命・中国革命と国際連盟・国際連合の結成である。健康権という理念の成立やその部分的実現である社会保障制度はそのごく一部でしかない。
しかし、ロシア革命も中国革命も変質し、国際連盟・国際連合も帝国主義諸国家の連合体にしかならず、まともに機能したとは言いがたい。
20世紀の反省は失敗した。
反省の失敗の原因は両者が切り離されていたことによる。
21世紀が、資本主義がもう一度もたらすだろう世界大戦の悲劇から逃れるためには、各国内部で下から沸き起こる資本・国家に対抗する運動を結びつけ、その力で国連が非帝国主義の諸国家連合として機能し帝国主義諸国家を抑制するように徹底的な改革をするしかない。
そういう世界の変化の推進力は、もちろん生産力の発展だが、それは量的にも線形に進むものではなく、質的にもみても主たる生産物も変化するし、生産のあり方(生産様式・交換様式)も変化する。
21世紀の平和に向かう推進力である生産力の増大は、(QOLを主たる生産物としー野田)、贈与と互酬を交換様式にするものだろう。
日本がこの流れのなかに加わる資格は、憲法9条の実行以外にない。
「憲法9条は米占領軍によって強制されたものだという批判をされてきたが、1950年の朝鮮戦争に際して米占領軍が憲法改正と再軍備を迫ったとき、日本人がそれを斥けた。ゆえに憲法9条は日本人自身がつくったものだ」(255ページ、一部野田改変)
憲法9条の理念はカントの「永遠平和」に由来する国際連合の理念そのもである。憲法9条を実行することで初めて日本は21世紀の平和に寄与することが出来る。憲法9条実行の向こうに世界共和国の展望がある。
こうしてみると、柄谷が僕達とどれほども違わない地点にいることが分かる。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 雑誌 現代思想 6月号(2016.06.04)
- 内田 樹「街場のメディア論」光文社新書2010年(2016.05.11)
- 「『生存』の東北史 歴史から問う3・11」大月書店2013年(2016.05.10)
- デヴィッド・ハーヴェイ「『資本論』入門 第2巻・第3巻」作品社2016/3 序章(2016.05.04)
- 柄谷行人 「憲法の無意識」岩波新書2016/4/20(2016.05.02)
コメント