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2014年12月31日 (水)

矢部宏治「日本はなぜ基地と原発を止められないのか」集英社インターナショナル2014/10

年末・年始の読書①

矢部宏治「日本はなぜ基地と原発を止められないのか」集英社インターナショナル2014/10

沖縄のみならず日本全土をアメリカの軍事植民地化にしてしまい、延々と米軍による日本国民の人権無私の振る舞いを許し続けていることの法的根拠は、敵国国民は人権保障の例外とする国連憲章の「敵国条項」が依然として日本に適用されているのを克服できないでいることである。

そうなった理由としては、アメリカの属国になって米軍駐留を積極的に求めることによってそれまでの地位の維持を図り続けている昭和天皇を中心にした日本の支配層の姿勢によるところが圧倒的に大きい。

すなわち、国体護持を図った敗戦のままの状態が70年間日本では続いているということである。中国や韓国との関係を本質的に改善できないのもそこに原因がある。-この考えは白井 聡の「永続敗戦論」と一致する。

それは、長く苦しい外交戦略の末、1990年に東西ドイツ+米英仏ソの2プラス4条約によって第2次大戦の敗戦国の地位をようやく脱し、国連憲章の敵国条項の対象でなくなったドイツとは著しい対照をなす。

そして、国連憲章の精神にも反して永続敗戦国の立場で自らアメリカ軍の駐留を希望するという日本支配層の戦略はアメリカ本体の姿勢も歪め、国連憲章から乖離させ、冗談のような「イラクを第二の日本にする」という理屈の戦争を始める「基地帝国」に変貌させるところまで導いてしまう。

今後の日本の歩む道は、この永遠敗戦勢力を抑えこみ、中国や韓国はじめ、第2次大戦までに侵略したした国々に謝罪を徹底して、米軍の駐留を廃棄し、敗戦国=敵国の地位を脱することしかない。

そのさい、その道筋として、強大な米軍駐留と裏表にある憲法9条第2項「戦力の放棄」を見直して、最低限の防衛力+外国軍基地の禁止+国連中心主義の中身に書き直す、という主張は、フィリピンの憲法改正による米軍基地撤廃に学んだ著者の独創的なところである。
ーここは論議を呼ぶところだろう。

ともあれそれを本気で始めれば、これまで海外の軍事基地引き上げを何度か提案してきているアメリカの良心派の動きを呼び起こすこともできる。

このとき中国や韓国からの信頼は不可欠の前提である。

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