中川雄一郎・杉本貴志「 協同組合 未来への選択」日本経済評論社2014/5
著者から頂いた本だが、現在の協同組合運動のキーワードが詰め込まれた本。
○レイドロー報告「西暦2000年における協同組合」1980 再発見の無限の重要性
○ロバート・パトナムの「ソーシャル・キャピタル」論への注目
人を窒息させるソーシャル・キャピタルと、解き放ってくれるソーシャル・キャピタルの2類型がある。
ソ連共産党内部は前者だったな。
○組合員の利益のみを排他的に優先するシングル・ステイクホルダー型の協同組合から、現在は組合員になれない貧困者など未来の組合員を広く見通してコミュニティ全体の架け橋となるマルチ・ステイクホルダー型協同組合に変わらなければならない必然性
○理事会ー地域支部ー班会という縦組織の衰弱と、委員会・プロジェクト・サークルという横組織の活発化という現象への注目
○「受診するだけ、利用するだけの組合員」を否定的に解釈するのでなく、同時にそれで良いと居直るのでなく、あらためて受診や利用という行為をどう発展させるか、
などなど。
圧巻は、終章で中川雄一郎先生が強調する「アマルティア・センの主張のように、市場が民主主義を滅ぼすのに任せるのでなく、民主主義が市場を自らの中に組み込むことの必要性こそ、協同組合のミッションに他ならない」というところである。
21世紀の協同組合論も実はアマルティア・センに学ぶことから始まると改めて思わせられる一冊。
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