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2014年10月 4日 (土)

スターリンとは誰か?

雑誌「」に連載されている不破哲三「スターリン秘史」と中公新書の横手慎二「スターリン 」を読み比べると、似ているところもあるが、違うところもある。

1941年6月22日のドイツ軍の電撃的侵略のとき、不破説ではスターリンはわずか数時間の沈思黙考で立ち直っているが、横手氏はミコヤンの回想に沿って、1週間は茫然自失とし、部下が彼の奮起を求めて尋ねて来たとき自ら粛清されるのではないかと恐怖していたとしている。従来説である。

ここは不破さんに軍配を上げたい。

経験から学び、実務能力・組織能力に長け、アカデミックな訓練を受けていないのでどうしても機械的な理解になりやすいが基本的には理論性もある、民族論などには見るべきものがあるというのが、二人の共通して描き出すスターリン像である。

理論において機械的というのは、哲学を唯物論対観念論、弁証法対形而上論の2×2表で説明する手法である。そういう姿勢で彼が作った異様に分かりやすい学習ノートが「弁証法的唯物論と史的唯物論」で、もはや顧みられなくなったが、一時は世界の共産主義運動の教科書となっていた。

今で言うと、カリスマ予備校教師的才能がスターリンにはあったというわけである。

では、何が彼を未曾有の歴史的犯罪者としてしまったのか。

横手氏は、異様な自己正当化と自己の主張への過度の確信だと言っている。131ページ。すなわち成功したカルトの指導者像である。

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