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2014年10月 1日 (水)

診療余聞・・・私の陥っている負のスパイラル

昨日は終日一般外来を担当したが、途中で2人を基幹病院に急いで転院させる必要があり、それなりに緊張した。

一例はくも膜下出血に進展した小脳出血だった。来院時には歩いてきて普通に会話していた人が、1時間後、僕が救急車に同乗して脳外科のある病院に転送した直後呼吸停止し、すぐに気管挿管が必要だった。転送まで1時間かかったのは、一番大きな病院の脳外科が受け入れの検討に30分かかり、最終的に断ってきたからである。2番目の病院は即決だった。ICTでもっと効率的に転送先を選択できないものかと思う。

もう1例は「嚢状」の形態をした「解離性大動脈瘤」だった。そんなものがあるのだろうかと半信半疑で血管外科にすぐに行ってもらった。

今朝、それぞれのケースの返事が届いていた。

後者の方は「PAUによる動脈瘤」というものだった。
すなわち「近年,大動脈壁の動脈硬化性潰瘍の穿通(penetrating atherosclerotic ulcer:PAU)が原因となり大動脈壁内血腫(aortic intramural hematoma:IMH),壁外血腫や動脈瘤が形成されるという概念が注目されている」というものである。
真性大動脈瘤、解離性大動脈瘤と異なる、第三の大動脈瘤形態である。
だから、僕が「嚢状の解離などというのは変だ」と思ったのは間違いなかったわけだ。だが、知識が少し足りなかった。
これは待機手術となった。

より重症だった前者は単純な高血圧性の脳出血ではなく、後頭蓋窩に発生した「硬膜動静脈ろう」によるものだった。「3D-CTA」からわかったという。
硬膜動静脈ろうは先天的な脳動静脈奇形と違い、後天的なもので、頻度は10万人につき0.3人/年と,相当珍しい。当然、動脈は外頚動脈由来である。静脈洞側の血栓形成が原因になるらしい。

さてこんなことを、外来の隙間を見つけて書き付けている僕にこそ二つの問題があると思う。

① それぞれ、もっと掘り下げて勉強しようという気にならないこと。専門家にとっては常識のことで、実地医家として遭遇する頻度が少ないものは勉強しても始まらないというニヒリズムがそこにはある。知的頽廃というべきものかもしれない。

②少人数の互いに無関心な心老いた医師集団の中にあって、こんな症例に遭遇したという経験を共有できないこと。どんなに緊張し、苦労し、のちに発見があっても、患者対応として失敗がなければ何もなかった日常に還元されてしまう。失敗してトラブルになって初めて集団的検討にさらされるということになる。これもまた負のスパイラルの中にある話のように思えるのである。

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