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2014年10月27日 (月)

日本消化器病学会教育講演メモ

10月26日は神戸の国際展示場に出かけ、消化器病関連学会の教育講演を最初から最後まで眠らずに聞いた。これで1年間は学習意欲が維持されるかもしれない。雑誌を追うだけではそうはならない。研究者の生の言葉を聞かないと、読む時の方向性(オリエンテーション)がつかめない。

これは、加藤周一体験についても言えることで、講演を聞き、一緒に食事をした前後では書かれたものを理解する深さが断然違ったと思う。

しかし、これをあまり強調すると、基本的には独学者である自分を否定することにもなるなぁ。マルクスやレーニンには絶対会えないのだし、デビッド・ハーヴェイにもおそらく会うことはない。
したがって、上記はあくまで相対的な話である。

それにしても人が多い。その上、ハロウイーンとかで仮装している若者がたくさんいて、ポートライナーの駅は大混雑している。この町ポートアイランドの都市機能はもう破綻しているのだろうが、それでも、海外富裕層の医療ツアーを目的とした先進医療の特区として感心できない目的での活用は進められつつある。

さて、今回のテーマは「炎症から癌へ」という話である。

①食道癌については、円柱上皮化(Barrett食道)ー腸上皮化生ー腺癌発癌のコースをたどる人が今後増えるだろうという話。

腸上皮化生を経ての発癌がトピックである。

逆流性食道炎は一般人口の7%にあり、手術が必要な重症例症例も増えている。
それが、全周性にのBarrett食道までに至るには十二指腸液逆流が重要な役割を果たしている。
Barett食道は食道裂孔ヘルニアの4.5%に見られるが、正常粘膜に比べ300倍の発癌リスクである。それでもBarett食道由来の食道癌は全食道癌の1.5%程度 にとどまっている。
しかし、アメリカでは扁平上皮癌より多いことを考えると今後増えてきそうだ。

食道粘膜が腸上皮化生を生じた時、胃と食道の境界を見定めるのが難しい。柵状血管か、胃大弯の襞の終点か。ただこれは目の前の癌を胃癌と名付けるか食道癌と名付けるかという問題で、あまり治療には関係しないだろう。

②ピロリ菌による胃炎と発癌

食道粘膜が円柱上皮化し、ついで腸上皮化生するので胃癌になるなどという説明が納得できるだろうかと、前の講演者の意見をさっと否定して話が始まる。

ピロリ菌感染が胃癌に至る道筋の始まりは、遺伝子の突然変異ではなくてDNAのメチル化という変化らしい。これをエピゲノム異常という。

DNAを自転車のチェーンにたとえれば、壊れているのではなく、サビついてしまうというレベルの話。

この特殊な炎症がやがて胃癌につながる。だからピロリ菌感染した胃で、どれほどDNAのメチル化が集積しているかというエピジェネティックな検査ができれば、リスク診断が可能になる。またメチル化を阻止できれば発癌予防にも

なおDNAのメチル化で損傷するのが癌抑制遺伝子のとき発癌につながるようだ。

③ 炎症性腸疾患と大腸癌

クローンは直腸、肛門の癌多い。
潰瘍性大腸炎の発癌率低下  20年で 4%   それでも一般人口より多い。

潰瘍性大腸炎の癌化の検査は難問。dysplasiaをマーカーにを10cmごとにステップ・バイオプシーして行くか、病変があれば狙撃生権するのか。どちらも完全ではない。癌化を疑うところを狙うと言っても、変化が強い潰瘍性大腸炎のなかでどこを狙うというのか。

ともかく生検でdysplasiaが高度になれば大腸全摘の適応になる。 high grade displasiaがあればその時点で4割は癌があるからである。

なおアサコールはUCの癌化リスクを減らしてくれない。

④C型肝炎と肝癌

これは結局、
http://www.jsh.or.jp/doc/guidelines/HCV_GL_ver3%201_Oct10.pdf
をしっかり読むということでしかない。

インターフェロン:抗ウイルス遺伝子の活性化によって効果を発揮する。同様に発癌を抑制する。

リバビリン(レベトール):核酸アナログとして効果を発揮する。

シメプレビル(ソブリアード):肝炎ウイルス遺伝子のNS3/4A由来のプロテアーゼの阻害剤として効果を発揮するDAA(直接作用型抗ウイルス剤)

ダクラタスビル(ダクルインザ)DCV:NS5Aを阻害するDAA。NS5A由来のタンパクはRNAを直接挟みこむことでその複製を支えている。
治療前にNS5Aに変異があると、治療後にNS3も含む多重の変異を残してしまう。治療前のNS5A変異の測定が必要でキットの選択が問題になる。

このためNS5A剤には限界があると言われている。

アスナプレビル(スンベプラ)ASV:シメプレビルとおなじくNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤。肝臓障害があるので、肝硬変ではChildAに限って使用すべき。

*費用:アメリカでのレディバスビルとソフォスブビル(NS5B 阻害剤 日本では未承認)合剤は1コース1000万円

*日本のDCV +ASV は1コース250万円位

*インターフェロン効果に影響するもの 宿主側のIL28Bが majorタイプであること
したがって、これであることが分かれば、インターフェロンを使った方がよい

*ウイルス側のNS5Aの変異ある人はまだまだ治療を待機した方がいいかもしれない

*IFNは抗腫瘍効果もあるし、またウイルスのNS5A変異にも影響されないので主役であり続ける

*SVR後もHCC要警戒
*三つの耐性に注目
NS3耐性・・・ D168変異 これがDAAの成績を左右するといってよい。
*NS5A耐性・・L31変異、Y93h変異

DAA治療中  ウイルスはいないのにALT上昇が起こることがある。自然に下がる。

⑤胆道炎症から胆道癌
胆道癌取扱規約の変更
総胆管を遠位胆管と肝門部領域胆管の二つに分けた。
前癌病変 としてBilINとIPNB(IPMNと同じ?)があげられる。
  BilIN   biliary intraepitherial neoplasia
   IPNB   intraductal papillary neoplasm of the bile duct

発癌しやすい状態は主に4つある

1合流以上は膵液の胆管逆流が発癌因子となる。

2原発性硬化性胆管炎PSC  4割が潰瘍性大腸炎合併

(ウルソ大量投与の発癌抑制は否定的)

3肝内結石症も胆道癌の前癌病変

4印刷業の胆管   全例γGT上昇
BilInIとPNBが前癌病変としてあった

⑥慢性膵炎から膵臓癌

染色して膵臓が赤く見えるのはチモーゲン顆粒 
ランゲルハンス島が白く抜けて見える

慢性膵炎患者は、悪性腫瘍死が多い

石灰化しているものが膵癌合併しやすい

荒廃した膵臓から膵癌が発生する

PSTIの遺伝子がSPINK1
この遺伝子変異が膵癌と関係  36%ー10%
遺伝子変異なければ0.5%

この遺伝子変異を持つ人は膵炎を起こしやすいので若年膵炎は遺伝子検査すべき

膵臓癌の多段階発癌
kーras, p16などの変異が関与
膵星細胞psc は膵臓癌増殖を促進

ナブ パクリタキセルとゲムシタビンの併用で治療する
前者は線維化防止

大切なのは慢性膵炎を早期に発見すること
「早期慢性膵炎」が超音波像として確立している
超音波内視鏡でないと診断できない

禁煙すると膵炎の石灰化が半減する

カモスタットの経口 は軽度の膵炎には有効、しかし膵癌は予防できない
(分子量小さく、腺房細胞に取り込まれる)

膵癌発見の最も有効なモダリティはCT   膵炎の人は年に1回CTを。

 

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