地域包括ケアとHPH:地域はどういう変革を求めているか
書いているうちにかえって混乱してしまったようなことのメモである。
「地域包括ケアの中の医療とは高齢者医療だ。
したがって、例えば小児科医は地域包括ケアとは無縁だ」
という意見があるが、それは典型的な誤解だ。
それは「地域包括ケアの中のあるべき病院とはヘルス・プロモーティング・ホスピタルHPHではないのか」という問いかけを補助線として使ってみるとよくわかる。
HPHの目標は、健康に向かっての地域の変革である。その課題は実は地域からやってくる。病院が勝手に地域を変えるわけではない。地域が変革を求めているのである。
HPHの医療の特徴は、健康の社会的決定要因SDHの視点を駆使して、直接的な地域の改善および健康影響評価HIAに立脚する変革の政策活動ということになるだろう。
僕はこれをこそ医療の総合性の真髄と呼びたい。
それがそのまま高齢者医療に矮小化されるわけがない。
ここで、強調しておきたいのは、「専門分化した医学の発展が人類を健康にするという考えは幻想だ、社会の合理的な改善こそが人類を健康にする、その法則性に沿わなければ医学の努力も無意味なものになる」という認識がSDH研究の最大の成果だということである。
確かに 、いま僕たちが医療の総合性を総合内科の中に見いだすのは厳密には仮説に過ぎない。
しかし、今のところ、先進国や日本の平均的な地域性という意味で現実的にそれを選択しているのである。もしここがベネズエラであれば医療の総合性を具現化するのは総合眼科になるはずだ。
実はこの選択を実行することは、これまでの医療の継続性や医師の慣性から言えば、最も辛く抵抗が大きい。
だが、ここで補助線を引いた、すなわち唐突に地域包括ケアとHPHの概念を結びつけて考えたことが生きてくる。
この 辛くもある選択が、僕らの側からの選択ではなくて、地域からの選択がであることが、この補助線ではじめて見えてくるからだ。
つまるところ、総合性の本質は「地域の人権ニーズへの限りない接近」だということになる。
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