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2014年9月17日 (水)

雑誌「世界」2014年9月、10月号を読みながら: なぜ東京一極集中が起こるのか

資本主義システムは、たとえばカリブ海の奴隷制度や東南アジアのプランテーションなど資本主義の外部からの暴力的略奪によって自らを拡大し精緻化してきた。本源的蓄積は一度だけあったのではなく、ずっと継続していたのである。

そういう外部なしには資本主義システムは発展しなかった。そして外部の奪い合いで2度の世界大戦をやり、何千万という過剰死亡をもたらした。

ところが近年の中国、ブラジル、インド、旧東側諸国の市場への繰りこみにより、もはや暴力的に略奪すべき外部がなくなった。(正確にはアフリカが残っているが、いまのところ略奪の対象にもならない状態に捨て置かれている)

そこで、先進資本主義国は自国内に外部を作らざるをえなかった。日本で言えば、正規労働者の賃金を無理やり下げ非正規労働者に変えて膨大な産業予備軍を作り出したことがそれにあたる。

新自由主義化とは端的に言って、先進資本主義国内に、暴力的に略奪可能な資本主義の外部を創出することだった。

マルクスが見た19世紀の西ヨーロッパの野蛮が、現代の日本に再び出現し、資本論が再度脚光を浴びたのもこのせいである。

安倍が「世界で一番企業が活躍しやすい国」というのも、企業用のインフラ整備が進み、かつ潤沢な「外部」が存在する国という意味だとすれば、きわめて分かりやすい。

さて、そのさい大きな足かせとなるのが少子化による将来の産業予備軍の縮小であり、また直面している超高齢化による費用負担増大である。

産業予備軍の誕生を増やし、その寿命を短縮化すること。

やりやすいインフラ整備の目的と合わせれば、人口の東京一極集中がその目的に最も正しい解である。地方は手っ取り早く消滅させた方が良い。

そこでいわゆる増田レポート2014/5/8が打ち出され「消滅可能性都市」「消滅する市町村」が名指しされたのである。

この効果は、雑誌「世界」9月号の小田切 徳美「『農村たたみ』に抗する田園回帰」によると以下のように描写される(193ページ)

「以上、要するに『市町村消滅』が言われることにより、乱暴な『農村たたみ論』が強力に立ち上がり、他方では『どうせ消滅するんでしょう』というあきらめが農村を席巻する。そして、それに乗じるショック・ドクトリン「自治体・社会保障・雇用などの制度リセット論」が紛れ込み、3者が入り乱れる状況が進行するのである」(1部 野田改変)

私たちの地域包括ケアを構想する時、都会型、地方型と分けて考えざるをえなくなっているが、その背景はここにあるということを忘れてはならない。

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