チーム医療について
山口民医連の「医療の安全と質向上委員会」18:30ー20:30で激論。
今日は「チーム医療」がテーマ。
チームにはコア・チーム、リソース・チーム、タスク・フォース・チーム及びその混合型がある。
わかりやすい順で言うと、リソース・チームの代表は医療安全委員会や医療倫理委員会である。今後は在宅NSTや認知症対策委員会が重要となるだろう。
コア・チームは、診療所管理会議、外来運営委員会、各病棟運営委員会が世話役となっている対象のチームである。
タスク・フォース・チームは、山口民医連で言えば、在宅緩和ケアチームである。地域では誰も他にはやっていないので、リソースになる必要は少なく、ひたすら自験例を増やして行くしかない。コンサルトして来るくらいならまるごと任して欲しいと思っているのが実情である。
議論の中で発見したことは、コア・チームは平面的な場の上に存在する(例えば、内科外来チーム、4階病棟チームなど)とすれば、在宅では、利用者⚪️⚪️さん家チームという形になり、訪問している家ごとにコアチームがあるのである。それは職種でも多様になるが、事業所、所属法人でも多様になる。そのまとめ役はかかりつけ医なのだろうか、ケアマネなのだろうか、行政なのだろうか。
これを考えると、従来の病院の中でコア・チームと考えていたものも、やはり職員中心的な考え方に支配されているもので、一人一人の患者にコア・チームが作られるべきだと考えなくてはならないのだろう。
また、自らをタスク・フォース・チームと位置づけているチームを孤立させず、歴史を切り開くパイオニアとしての援助を全組織あげて提供する必要がある、ということも改めて気づいた。
一瞬、参加メンバーの中に緊張も走る会議だったが、極めて有益だった。
なお、以下はおまけのようなものだが、この会議の中での僕の報告はだいたい次のようなもの。
「まとめ
チーム医療の第1段階:組織図に多職種からなる基礎的チームが「外来運営委員会」の名前などで明確に位置付けられ、その長としての医師が指名された。
チーム医療の第2段階:基礎的チームの担う現場の援助のための各資源委員会チームが作られ、チームが複雑化した。その中で、医療安全委員会がもっとも強力に議論し、「権威勾配の強いことが事故の最大要因」ということを発見し、チームのあり方を変えた。
チーム医療の第3段階:チームを作ることの目的は、病院内の効率改善でなく、
患者のQOLの向上にあることが明らかとなり、医療倫理カンファレンスの重要性が際立って来た。と同時に、チームが介護や法人や、事業所の壁を越えて広がり、地域のNPOや行政に直接深くつながり、新たな組織的位置づけが必要となって来た。
本文
医療の質指標(QI)を考えるとき、構造・制度(structure)、過程(process)、結果(outcome)の3領域に分けて考えるのは基本中の基本であるが、チーム医療について考えてみると、この3領域が、実はチーム医療の発展の歴史を表現していることに気付いた。
チーム医療が初めて関心を呼んだのは、診療所に代わって病院が医療の中心となり、それまで医師と看護師しかいなかったような臨床現場に、検査技師や放射線技師をはじめとした多様な職種が現れたからだった。薬剤師も病院の中に組織された。小さい病院が大工場に相当するほどのライセンス付きの技術者で溢れた。まずは医師を頂点にしたピラミッド型の医療チームの組織的構造structure が出来上がる。
そうすると今度はその動かし方(process)が問題になる。そうなると、それをどういうチームに組織するかが問題となり、ピラミッド型を崩してマトリックス型にし、それを「チーム医療」と呼び始めた。これを第一のブレークスルーだったとしよう。
民医連はこれについて「医師を中心とした民主的集団医療」という構想を持った。しかし、それはまだアイデアの段階に過ぎなかった。
それから現場でのカンファレンスの励行、クリニカルパスの策定や、様々な現場援助のリソース委員会の立ち上げが進んだ。
その中で最も影響力が強力であったのは医療安全委員会であり、「職種間の権威勾配こそが医療事故の本当の原因」という認識が確立し、「医療チームは医師を中心とする」という考え方が大きく揺らいだ。
これは医療チームのありかたにとって第二のブレークスルーだった。
しかし、これもいまになると行き詰まった感がある。
臨床現場の職種間の協働は一向に改善していかない。医療事故も起こり続ける。
その間隙を突いてアメリカ生まれの技法であるチームSTEEPSが紹介され医療安全やチーム作りの領域を席巻し始めた。それはチーム医療の効率には寄与してもチームの
民主主義に対しては中立である。
では第三のブレークスルーはあるのか。
それを予想するとすれば、チーム医療ならではの結果outcomeの注目の中にある気がする。
具体的にいえば、患者のQOL(=幸福)の改善を示す質的指標QIに注目し、適切な表現指標を見つけ、それをチーム医療のあり方とできれば、そこにブレークスルーはあるはずである。
ただし、具体的に何を患者のQOLを示す指標、それをチーム医療あり方の成果として設定できるかはまだ試行錯誤段階である。
勘でいうと、それは「反省的な医療倫理カンファレンス」の質の中で発見されるという気がする。
具体的に言えば、チーム医療が患者のQOLを改善しているということを確認するための指標として、医療倫理カンファレンスの頻度やその中での認識の発展をとりこまねばならなければならない、と言っていいかもしれない。
まだ予感の範囲だが、医療倫理カンファレンスへの患者・当事者参加がQOL改善の出発点になることを考えると、「患者の、あるいは当事者中心のチーム医療」が新しい「患者QOL改善のためのチーム医療」の名前になるのではないだろうか。」
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