平野啓一郎「透明な迷宮」新潮社2014/6
分人論への興味で読んできた作家だが、これはそれとは離れたところで書かれた短編集。
2011年の体験を少しづつ言語化しているという風がある。
僕はスペイン民謡のギター曲「アメリアの遺言」 を聴きながらこれを読んだので、印象が混ざりあってしまった。
2011年の体験によって、僕たちは透明な迷宮に入り込み、お互い見えていても本当に近づくことはできなくなった。
どうすれば迷宮の出口を見出すことができるのか。
本当にその出口はあるのか。
それを問い続けた作品ばかりである。
あの年、僕もしばらく全ての人間関係を失うことがあった。
そのことを思い出すと今、こうして呼吸して何かを書いているのが不思議な気がする。
それは、最後の作品に出てくる時間の流れを失った依田という演劇家に似た感慨でもある。名前の響きが自分に似ているのも何だか奇妙な気がする。
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