中川雄一郎編「協同組合は未来の創造者になれるか」家の光協会2014年
日本協同組合学会訳編「西暦2000年における協同組合=1980年レイドロー報告」1989を探しまわって、ワーカーズ・コープにわずかな数残っていたのを譲ってもらい、懸命に読んだのは、もう15年くらい前になる。それはその後、自分が医療生協の理事長になるうえでも決定的な読書体験だった。
いま改めて、そのレイドロー報告をもとに、日本の協同組合の展望を探る本が出版された。それが上記である。
昨日、受け取って、今日はあらかた読んでしまった。
レイドロー報告後の最も重要な問題提起は、アマルティア・センによる「協同組合の三つのアプローチ」(1998 「協同組合の民主主義とグローバリゼーション:両者の共存は可能か」)である。
したがって、私たちの課題は、レイドローとセンを受け継いでいかに協同組合を日本で発展させるかということにある。
その中では、社会正義を功利主義から救い出したロールズを批判的発展的に学ぶことも重要と思える。ロールズの正義の中に、それを形成する過程が考慮されていないことを批判し、「参加と協同」を正義を形成する過程の上で最も重要とし、それにケイパビリティという名前を与えたのがセンである。
そんなことを学びながら、、結論だけ言うと、次のようなことになる。
協同組合がなすべきアプローチは三つある。
一つ目は、「制度のアプローチ」といい、社会制度の中にしっかり事業と運動の足場を作ることである。
二つ目は「結果のアプローチ」といい、地域への貢献を目標とし、その到達度を測定することである。
三つ目は「過程のアプローチ」といい、協同組合の理念を鍛えることである。
最近エヴァ・フェダー・キティ「愛の労働」を読んだことからの示唆も加えて、僕流にいうと、この「過程のアプローチ」は、「ケアされる人」「その人をケアする人」というもっとも脆弱な人を中心にし支援する「ケアの倫理」、何人も排除せず包摂する「協同の倫理」、構成員の平等な権利を保障する「参加の倫理」の、いわば「三つの倫理」の成熟を継続的に追求することである。
後半は、細かな問題にわたっていき、やや退屈になるが、民医連の展望を考える上でも欠かせない一冊となるだろう。
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