ある日の芥川龍之介
龍之介は何時ものように日直をしていた。
最初の外来患者さんは、穏やかに笑っている高齢女性。しかし、昨日から嘔吐が続くとのこと。
「ふと」腹部エコーのプローべを当ててみると、胃の著明な液体貯留の少し足側の空腸に円形の高エコーの腫瘤がある。
改めてCTでみると同心円状で、どうもメッケル憩室の腸重積に思えてならない。90歳過ぎてもあるのかなぁ、と呟く。
球形の胆石の胆嚢ー消化管穿孔からの脱落によるイレウスの可能性もある。だが、そんな胆石が以前からあったかどうかは新患なので不明だ。
ともあれ、在院時間 30分にして、外科の日直体制がある病院に救急車で去って行った。
衰退する小病院の静かな一日の始まりだった。
「今度は病棟」、救急車の去る音を聞いていたら、心肺停止の連絡。
挿管準備をピッチで指示しながら階段を駆け上がって(そのために似合わぬスニーカーを履いているのだ)、蘇生。
肺水腫像を呈しているX線を確認し、ルーチンの蘇生後用オーダーを出し、主治医と連絡をつけて「またぶらぶら」階段を降りた
そうこうしているうちに、静かな病院も「もう午(ひる)に近くなった」のである。
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