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2014年6月12日 (木)

小川慈彦先生(石川県保険医協会)講演の感想

山口県保険医協会地域医療部は、5月24日に、石川県保険医協会の小川滋彦先生を招いて「在宅NST」をテーマにして学習会を開いた。

山口県保険医協会の地域医療部長としてその感想文を書くと約束しながら、全く失念して、締め切りが過ぎたと今日知らされたので、昼休みに大慌てで書いた。

小川講演の感想
政府の進める新自由主義的な地域包括ケアにおける在宅医療は、つまるところ、2025年には年間160万人と現在より40万人も増える死亡者の安上がりの処理を目指すものに過ぎない。

高額な病院死亡は現在の割合(8割)の半分以下にしたい。施設死亡も介護保険からの支出は月40万円とそうとう高額となる(税金からの支出は5割)が、自宅なら20万円は行かない。その差、20万円は家族が無料で働くからである。こんな計算で在宅医療が拡大されようとしている。
死に場所確保のための在宅医療だから、どうしても自宅での癌死だけがモデルとなる。官製の在宅緩和ケアの研究会が盛んなのも、講師となる熱心な在宅医の善意の悪用である。

そうではなく、あくまで在宅で暮らす障碍者のQOL、すなわちより良い生き方のための選択可能性を確保することに主眼を置いた在宅医療をどう発展させるかが、民主的な地域包括ケアの核になるのである。

高齢者においては内臓疾患や認知症を持っての在宅生活がモデルとなる。
その場合のQOLにおいて、経口摂取の維持、改善は最も重要なテーマの一つである。このことは、自宅での療養に限らず、在宅サービスの様々な場面、すなわち、グループホーム、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅、ディサービス・ディ・ケアにおいて共通することである。

そのためには地域の多職種連携が必要だと気付き、その見本を示して見せたのが、今回の講師である小川慈彦先生(石川県保険医協会)だった。

もともとは、病院で胃瘻を造設されて自宅に帰ってきた人の経口摂取希望に応えようとしたところ、諦めていた「口から食べること」が可能になって胃瘻が不要となった経験から始まっている。

一旦胃瘻を作れば病院側は経口摂取を諦める。だが胃瘻は、一時期の栄養低下を乗り越え、経口摂取再開のための手段だったかもしれないのである。たとえ、そうでなくても、経口摂取への努力は、QOLを必ず改善させる。
そのための多職種チームが在宅NST(栄養サポートチーム)である。チームには歯科医師が必須で、できれば、管理栄養士、ST(言語療法士)が揃うことが望ましい。

患者の自宅に各職種が集まり、本人と家族を交えて行うカンファレンスの中に、実は21世紀の医療の展望がある。この形がその原型になるのである。
もし、それを一つの医療運動と考えるなら、 医師と歯科医師の連携が基礎になるということからみて、それは医科ー歯科の壁のない保険医協会からしか始まらないだろう。

管理栄養士やSTの確保は病院の協力がなくてはできないことだが、それは逆に病院の地域活動の発展方向を示唆するものとなる。21世紀の中小病院の役割は病棟に収容した患者のケアに終始するものではない。地域のケア資源の集積場所の一つというのが今後の中小病院のあるべき姿である。

小川先生は最後に、「自分にとって在宅は主戦場と思えなくなった、長い在宅医療に患者さんが移行する前のさらに長期に及ぶ外来医療にこそ本当のテーマが見つかる気がする。連携もそこでは格段に大きい。外来NSTを実現させたい」と語ったが、私はそれに全面的に賛成する。

今後の医療は、病院医療を時に応じて使いながら、外来医療から在宅医療に向けての切れ目のない、住民の健康を作る活動である。その主体は住民のQOLを中心にして連携した多職種である。多職種を医療に限らず、企業、学校、各種住民組織などとすれば、それがまちづくりの「まち」なのに違いない。

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